「……」
小さく頷いて、1歩、足を伸ばそうとしたら。
グイッと腕を掴まれた。
「……」
「……え?」
無言のまま、神楽さんと見つめ合う形になって戸惑ってしまう。
「か、神楽さん……?」
神楽さんは斜め下に視線を移した後、そのままあたしと目が合わなくなった。
……どうしたんだろう?
何か言いにくいことでもあるのかな……?
「……悪い」
パッと手が離れて、衣吹さんを抱えなおした神楽さんはあたしに背を向けた。
神楽……さん……?
やっぱりいつもと違う。
だけど、何も言わず歩き始めた神楽さんに、あたしはその背中を見つめることしかできなかったんだ。
♢♦︎♢♦︎♢
門道の軒下で、あたしは1人しゃがみ込んだ。
サーーーと、規則正しい雨の音を耳で聞き、顔を伏せる。


