「……で?惨めにとぼとぼ帰ったわけ?」
「はい。帰りました。帰ってきました。なうです。進行形です」


潰れてしまいそうな心は、不思議な程に彼女を求めた。

幼馴染の紗子の自宅に突撃訪問し、何度あげてもらっても慣れない大きな屋敷を遠慮なくまたがせてもらった。

制服から白いワンピースで身を包んだ彼女はわたしの訪問に溜息をつきながら「どうしたの?」と訊ねてくれた。


夏目くんに呼び出しを受けていたこと。
夏目くんの家の前に見知らぬ女性がいたこと。
それがきっとあの最強幼馴染であろう小鳥さんのお姉さんだということ。
そして、夏目くんにその場から立ち去るように言われたこと。


全てをぼろぼろと、まるで吐き出すように話してみせた。

口が軽いと言われようが、そんなのは今、余裕をなくしたわたしには出来ない。

彼女は時折眉根に皺を寄せながらも下手な相槌を打つ事なく黙って聞いていた。