「はーあ……」

明日からのことを考えるとため息が出る。
ため息をつきながら下校しているのは、わたし、
藤野茉央くらいだ。

私は、自分のことが大嫌い。
隠れ陰キャなとこも、ブスなとこも。

隠れ陰キャ、っていうのは、
本当は陰キャなのに外では陽キャのフリをしてる、
っていうこと。

いい加減それも辛くなってきたんだけど、ね……。。。

ほんとに、退屈。
どれだけ退屈で自分が嫌でも、
生きていかなければならない、この世の中が、
嫌いだ。

じさつ、なんてのも考えてみたけど、
怖い。
世の中がどれだけ嫌いでも、飛び降りるのは、
痛そうだし、苦しそうだし。

そんな怖い手段は、絶対に、とりたくない。

そんな手段をとらなくとも、
きっとこの状況を打破する方法があるって、信じてる。

なんて思いつつも、家に帰る。
家に帰ったら、妹の琴葉がいる。
ただ、その琴葉ですら、お世辞にも人柄がいいとは言えない。

嫌味はいうし、私のコンプレックスを
狙っているのかいないのか、イジってくるし。

頭の中でぐちぐちぐちぐち言っていると、

「これ…落としましたよ。」

と、後ろから声が聞こえてきた。
見ると、かなりのイケメン男子が、私のハンカチを持って
立っていた。そして、

「あ、ごめんね。自己紹介忘れちゃった。
おれは、川村斗亜。高校一年生。」

と言われた。
その瞬間、恋に落ちた。
しかし、黙っているわけにはいかず、私も慌てて、

「あっ!えーと…藤野茉央です。
え、と……川村さんと同じく、
高校一年生、です…。」

かなりしどろもどろではあったものの
とにかく自己紹介は終わらせた。

ハンカチをもらうと、私は大慌てで家に向かって駆け出した。
それは、冬に春が訪れるかのような奇跡の出会いだった。
見上げた空は、普段通りのはずなのに、
普段よりも、爽やかに見えた。

人生捨てたものじゃないな。そう思えた。