「ごめんな、何も出来ずにいて……」

 俺は毎日彼女の顔をできるだけそっと優しく拭いてやりながら、世界中の技師と連絡を取り勉強をし、彼女を直すための情報を探していた。

 大抵の相手は、『たかが一体のアンドロイドごときに』と俺を冷ややかな目で見る。
 さらに、代わりも持たずに異性の姿の一体の“造り物”に熱を上げる『愚か者』だと言われた。

 ある相手は親切に調べるフリをして俺の金をせしめようとした。
 そんな相手は壊れた彼女になど目もくれないだろう。俺は気付いた段階ですぐにその相手とは距離を置いた。

 俺は諦めない。
 大好きな彼女のため、目覚めさせると誓った今まで不甲斐なかった自分のため……


 そのうち俺は、自身で彼女を全て直すことを視野に入れることにした。

 今までの応急処置的な情報から本格的な機械技師のための情報にまで手を伸ばし、次々と漁った。
 今は主流となった通信教育で、元々良くないこの頭に精密機器の扱いや基礎知識も叩き込んだ。

 ずっと、自分のせいで彼女が二度と動かなくなることが怖かった。
 しかし手をこまねいていても彼女が直らないのなら、自分でやるしかない。

 いま彼女を救えるのが、俺しか居ないのなら……

「大好きだよ、君。必ず目覚めさせる。そして必ず君を、俺と同じかそれ以上に好きになってくれる相手に譲るんだ」

 俺は彼女を抱きしめてそう呟く。
すると、

ズキッ……

 彼女の体の中から、なぜかそんな音が聞こえた気がした。