君の笑顔をください 〜アンドロイドの君へ〜

 俺はできるだけ丁寧に彼女を調べ始めた。
 そして数日掛けて彼女の不調と思われる箇所を、今まで自分の得た知識や必要な道具を使ってさらに慎重に直していく。

 俺は彼女をまた目覚めさせたい一心だった。


 ……どれほどの時が過ぎただろう。
 最後の仕上げに彼女の服をそっと整える。

 手は尽くしたつもり。
 自分はただひたすらに彼女を目覚めさせたい一心で慣れないことも必死に覚え、機器を揃えた。

 ……目覚めてくれ……

 俺は強く祈りながら目をつぶっていた。

 しかし目を閉じていても、ベッドに寝そべる目の前の彼女からは一向に音がしない。

 俺は下を向いたまま愕然とした。

 やはり自分には無理だった。
 “出来損ないの劣等生”と言われていた頃の自分から、変わることは出来なかった……


 すると、

「……嫌です。私は、ここを出たくなんて……」

 自分ではない。
 俺は気付きハッと顔を上げる。
 
 目の前の彼女は、目を閉じたままいつの間にか口をうっすらと開き、人間と同じようにハアハアと苦しそうに息をしていた。

 俺は驚きのあまりに何も出来ずにいる。