シークレットデータ内の一つにあったのは、俺と過ごしていた期間にあった彼女の、膨大な『感情』の記録データ。
 つまり俺と過ごしていた時の彼女の“気持ち”だった。

 通常時の彼女の感情データにあったのはほとんど、恋愛に近いほのかな淡いものからそれが悲しみの感情に染まっていく経過を表すもの。

 ここから分かるのは、
常に接していた俺に向けられていたのは恋愛感情に近いものであり、それが俺の仕草か言葉により悲しみに変わっていっていたということ。

「いったい俺の何が、彼女を悲しませることまでしたんだ……?」

 いくら考えても思い当たらない。
 それに彼女から、俺への自身の気持ちを聞いたことなども一度もない。

 やっと彼女を目覚めさせる糸口を見つけ、彼女を修理できる道具も知識も揃え終えたにも関わらず、俺はその手を止めて必死に考えていた。

 俺は彼女に何をしてしまったのだろう?
 自分なりに彼女を大切にしてきたつもりだったのに、彼女にはそれが伝わらなかったというのか。
 こんなに自分の理想でもあった彼女を想っていたのに……

 しかし俺はふと気付く。

 自分は彼女に好意を伝えたことが、あっただろうか?
 ……彼女に嫌われたくないばかりに、彼女に『好き』だと伝えることから逃げていたのでは無かっただろうか?

 それ以前に俺は、気持ちも聞かずに彼女がこの家から出たいものだと思いこんでいた。
 俺は倒れる前の彼女に、なんと言っただろう?