日常にあのもっさり頭が加わってからどれくらいか経った頃。


青野くんが私を見て無反応だった理由が、なんとなくわかった。


とにかく周りに興味がなさそうなのだ。


仲の良さそうな友達がいないどころか、いつ見ても青野くんは一人だった。


いくら常時観察しているわけじゃないとは言え、誰かと話している姿どころか、一緒にいるところさえも見たことがないというのは、少し変だと思う。


……まぁ私も似たようなものだけど。


けれど私と違うところは、一人でも青野くんはいつも堂々としていた。

周りを気にすることなく、これが当たり前というように。


怯えてばかりいる私とは正反対だ。


それでもそんな青野くんを良しとしない人はやっぱりいるらしく。


ある日、初めて青野くんが誰かといるところを目撃した。


けれどそれはとても良い雰囲気じゃないのは、周りから見ても明らかで。


席に座った青野くんを3人で囲むかのような体制に、あの時のことを思い出してバクバクと心臓が荒れ始める。


「なぁ地味野〜」

地味野って青野くんのこと?

廊下からこっそり話を聞いてる私には、あまりはっきりとした内容はわからないけど、真面目な青野くんに授業のノートを見せてくれというような感じだった。


「は? 嫌だけど」

たった一言。

大きくもない青野くんの声が、静かに、でもはっきりと私の耳を震わせた。


周りの男の子達がそれに対してきゃんきゃんと喚いているけれど、それにはもう我関せずというように机と向き合う青野くん。


その姿に、嫌な鼓動を刻んでいた心臓が優しく波打ったのを感じた。