あの時の私はこれで全てが元通りになると本気で信じていた。

そんなこと、あるわけがないのに。


「……別れよ」
「なんで?」


当たり前の反応に、でも理由なんて言えなくて。


「なんか、告白されて浮かれてただけっていうか。もう面倒くさくなっちゃって」


あまりにも最低な言い訳だった。


「……マリアか?」
「え……?」
「何か言われたんだろ」


なんでそんなことを言ったのかはわからないけれど、それに頷くわけにはいかなかった。


「違うよ」
「でも」
「違うから」


逃げるようにその場を去った私を、どう思ったのか。


今思えばもっと上手くやれたはずなのに、その時の私にはそれがいっぱいいっぱいで。


その日のうちにマリアちゃんに詰め寄った彼のせいで、あの時は綺麗だったマリアちゃんの目元が赤く腫れあがっていたのは翌日のことだった。


「綾瀬さん、ひどいよ」

泣き腫らしたのか、掠れた声で詰るように言われた言葉。


「ほんっとさいてー」
「マリアちゃん大丈夫?」

昨日よりも強まった敵意に、あぁもうダメなんだと。


そこから私が孤立するのに、さほど時間はかからなかった。