「行こう、綾瀬さん」


出された手を繋いでマリアちゃんの横を通り過ぎる時、ぼそっと小さい声であんたが悪いのよと。

今まで見たこともないような悔しそうな顔だった。


それに足を止めて、まっすぐにマリアちゃんと向き合う。


「私は、島田くんに何も言ってないよ」


それだけ言って今度は私が青野くんの手を引っ張るように屋上を後にする。


閉めたドアの向こうで、初めてマリアちゃんの泣く声を聞いたような気がした。