次の日、いつもは一番に「おはよう」って挨拶をしてくれる真山くんの姿が教室になくて、しゅんとしてしまう。昨日逃げてしまったことを謝りたい。心配してくれて星のキャンディーもくれたのに「ありがとう」が言えなかった。はぁ、とため息が出てしまう。

「せとかおはよう。元気ない?」
「……うん、平気」

 里麻にも心配されてしまう。笑顔を作って平気なふりをするけれど、空いている真山くんの席を見て、また一つ、ため息が出た。

 珍しく先生と一緒に教室に入ってきた真山くんに視線を向けたけれど、こっちを向いてはくれなかった。
 今日はなかなか真山くんと目が合わない。いつも決まって笑顔をくれていたのは、単なる偶然だったのかな。本当は目が合わない日の方が普通なのかもしれないな。

 帰り際、荷物をまとめると「またね」だけでも言いたくて、真山くんの姿を探すけど、どこにも見当たらない。

 今日のあたしの真山くんアンテナは、感度が鈍いらしい。
 結局、一度も真山くんと話すどころか目も合わずに昇降口まできた。アンテナは感度が悪いし、きゅんのない一日がこんなにも寂しいものだなんて初めて知った。

 真山くんのことを諦めることなんて、あたしに出来るんだろうか。

 はぁ。とため息をつくと、ポツリ。雨が鼻先に当たった。

「わっ、雨だぁ。さいあく……」

 そう言った瞬間に、瞬く間に雨の粒は大きくなる。駆け出そうとした瞬間、さっきまで当たっていた雨粒が当たっていないことに驚いて、振り向いた。