電車の中ではほとんど携帯を触って話してなかった。
電車から降りた時も最初は話してなかったけど、男の子から話してくれた。内容は特に当たり障りのない会話だった。
高校に入って初めてだった。
『なんか急に話しかけてごめんね。高校に入って電車で通うの初めてで不安だったから一緒に行けてよかった。てか、これからも仲良くしてよ。もし同じクラスだったら。』
男の子はもうすぐ正門に着く頃にそういった。
びっくりした。急すぎて頭が真っ白になった。
仲良くして欲しい?
嘘でしょって思った。
学校では地味で話すことも積極性のない私が?
教室に居たとしても朱音や香織以外には気が付かれないぐらいだろうし。
私はどこに居ても分からないような存在なのに。
そんな私がクラスで人気がありそうな男の子の友達とかになったら女の子の視線が熱くなるに違いない。
絶対に友達になる訳には行かない。
もし友達なんかになったら、悪口言われるし嫌になる。
もしもの話だし、同じクラスじゃなきゃいいことだし。
『同じクラスだったら。』
私はそう佐倉くんに伝えた。
そして私たちは学校の正門に着いてお互い離れた。
靴を上履きに履き替えってクラス分けの貼り紙を見に行った。
『咲良ちゃん、俺たち同じクラスだよ。これからもよろしくね。』
こういう時に限って運は私に向いていた。
いつもなら全然良くないのに。
ただの友達だし、別にいいのかな。
教室話したり、声をかけられたら話す程度だしね。
『よろしくね、佐倉くん。』
私達はこの日に出会って仲良くなって友達になった。


