律「うん、よろしくね。それじゃあ行こうか」


差し出された手を握る前に私は叔母さんと叔父さんを真っ直ぐ見上げた。


「……な、長い間、お世話にッ、なりましたッ!!」


私は深く頭を下げた。


叔母「ふん、心にも無い事を言ってないでさっさと消えな!!目障りなんだよ…!」


「………は、いッ……ありがとう、ございましたッ!!」


今までされてきた事を考えると辛くて苦しくて……でもあの時、引き取ってくれなかったら私はどうなってたか分からない。
少なかったけど食事を貰えて屋根のある部屋で過ごせたのも叔母さん達のおかげ。
だから最後にお礼を言ってからりっ君に手を引かれながらリビングを後にした。










律「莉央ちゃん、僕外に出て待ってるから自分の荷物纏めてきてくれる?」


「……ない、です」


律「え?」


「この家に来てから持ち物全部捨てられちゃって……一度も私物買ってもらった事もないし」


そう、10年前にこの家に引き取られてすぐ両親や父方の祖父母に買ってもらったランドセルや勉強道具はもちろん、服やおもちゃなど全ての私物を捨てられて持っているのは今着てるボロボロの服と吸入器ぐらいしかない。


律「……マジか…すぐにでも買い出しに行った方が……って、靴は?下駄箱か?」


「靴もないです。外に出ないようにって…」


律「……あいつら……ごめん莉央ちゃん、ちょっとじっとしててね?」


りっ君はそう言うと私を姫抱きにした。


律「なんか身体熱いけどもしかして具合悪い?」


「す、少し……でもまだ我慢出来るから大丈夫…」


律「いや、別に我慢しなくても……とりあえず家(うち)に戻るか…」


りっ君はそのまま家の外に出ると目の前に止まっている車の助手席に私を乗せてから運転席に乗り込み、車を発進させた。