「ゴホッゴホッ」

ある朝、起きると咳が出てきてちょっと体が怠かった。
怠くても家事はしないといけないから部屋の外に出た。


叔母「やっと起きたのか。さっさと来いよ!!」


「い、痛っ…!!」


部屋の外には仁王立ちした叔母さんが立っていた。腕を強く掴まれてそのままリビングに連れて行かれた。

リビングには叔父さんと知らない男の人がいた。

整った顔立ちの黒縁眼鏡を掛けている長身イケメンの若い男性で私を見るなりビックリしていた。
私の服装(ボロボロの薄着)や身体の傷を見たんだから当たり前だと思う。
ビックリした顔から眉間に皺を寄せ怖い顔になると叔母さんの事を睨みつけた。


男性「アンタっ、莉央ちゃんに何したんだ!?」


叔母「うっさいわねぇ、アンタにあげるんだから文句言うなっつーの!!」


(だ、誰この人…?それにあげるって何?)


何の話をしてるか分からなかった。


男性「もういいっ!!ゴホンッ、久しぶり莉央ちゃん…って言っても覚えてないかもしれないけど僕は鷹邑 律(たかむら りつ)。キミが昔住んでた家の隣に住んでてよく遊んだりしてたんだけど覚えてないかな?」


(たかむら、りつ…?たかむらりつ……あっ!!)


脳裏に浮かんだのは昔の記憶、両親が元気で一緒に暮らしていた頃。
隣の家には鷹邑さんっていう四人家族が住んでいた。
喘息で通院していた病院の小児科の先生で主治医の鷹邑 伊吹(たかむら いぶき)先生と看護師さんの葉月(はづき)さん。
二人は夫婦で病院以外でもよくお世話になっていた。