その後、驚いたのは莉央ちゃんの口から聞かされた私物を全て捨てられたという事と10年間なにも買い与えられていなかった事、靴までない事だった。


(まぁ、莉央ちゃんにはこれからいっぱい買ってあげればいい。今まで辛かった分、絶対幸せにしてあげないと)


そう思い、とりあえず靴がないから莉央ちゃんを姫抱きにすると莉央ちゃんの身体がなんか熱い事に気付いた。


「なんか身体熱いけどもしかして具合悪い?」


「す、少し……でもまだ我慢出来るから大丈夫…」


「いや、別に我慢しなくても……とりあえず家(うち)に戻るか…」


そのまま家の外に出ると目の前に止まっている車の助手席に莉央ちゃんを座らせてから運転席に乗り込み、車を発進させた。

約30分後、自宅(タワマン)が見えてきた。
駐車場に入り、車を停めると莉央ちゃんを姫抱きにしエレベーターに乗り込み、30階のボタンを押した。

エレベーターから降りてすぐの所にある玄関の扉の鍵を開けてから家の中に入り、すぐ左側の部屋のキングサイズのベッドに座らした。

「とりあえず熱測ってくれる?」


まずは一通り診察する事にした。
熱は8度2分で喉は少し赤く、もしかしたら風邪かもしれない。
最後に胸の音を聴こうと聴診器を鞄から取り出した。
ところが莉央ちゃんはなかなか服を捲ろうはしなかった。
おそらく服に隠れている痣や傷を見られたくないのだろう。

服をギュッと掴んで震えている莉央ちゃんの小さな傷だらけの手に優しく自分の手を重ねた。


「大丈夫、何があっても僕はキミを嫌ったりなんかしない。僕の事を信じて欲しい」


そう伝えると莉央ちゃんは少し安心したような顔になり、少しだけそっと服を捲った。