町中はどこかせかせかと忙しなく動いている。
理由は言うまでもないが、それだけではなく、何故か俺の心までも落ち着かないものになっていた。
今日は特に予定はなかったけれど、心のざわつきがどうも気に入らなくて、外に出てみることにした。
「あれ、響じゃん」
平坦な道をただ当てもなくとぼとぼと歩いているとそう声をかけられた。
もう声ですぐに春翔だということはわかったのだけれど、心を落ち着かせたくていつものようにいたずらに返事をしてやらなかった。
そうすると、決まって春翔は肩から豪快にタックルを決めてくる。案の定、俺の身体はふっと浮き、数センチほど吹き飛ばされた。


