...凄くいい曲を見つけて涙が止まらない......最初はそこまででもなく、いい曲だな程度に聞いていたが、コメント欄にあった考察やネットの考察を読みながら自分でも制作者の意図を読もうと考えていたら一つの考えにたどりついた。それが切なくて涙が止まらなくなってしまった。
今日もこれから学校なのにどうしよう。家で俺のことなんて心配する人はいないから大丈夫だけど、楓になんて言われるかちょっと怖いな。とりあえずサボるわけにもいかないし準備するかぁ...
あぁ、泣きすぎて目が痛い、擦ると余計痛いけど油断するとやってしまう。
あ、ネクタイどこだ?見つからないし、なんか落ちてた画鋲踏むしもうふんだり蹴ったりだ。朝良いことがなかったら絶対もっと気持ちが暗くなっていただろう。本当にあの曲に感謝だ。
そろそろ下へ行って朝食を作ろうと思いリビングに降りたら、空がいた。
なんでコイツが?この時間はまだ部屋にいるはずなのに、早く違う場所に行かなければ。早く、早く。
「に、兄さん...?」
一瞬時が止まったかと思った。なんでコイツが俺に話しかけるんだ?俺のことなんて嫌いで話したくもないはずだろう?やめろ、俺を見るな、腕を掴むな。お前がいるから人生が狂ったんだ。こっちを見ないでくれ、お願いだから。
俺に諦めさせてくれよ...!!
「大丈夫...?」
何が、?お前のせいで俺が傷ついて、苦労して、努力して、苦しんでるのにいるのに大丈夫?
ふざけるな全部全部全部全部お前のせいなんだよ!
空の手を振り払おうとしたら、自分の頭に衝撃が走った。後ろを振り返ると母が立っていた。
「あんた空に何やってるの?!?!?!」
数秒経ってから自分が叩かれたことを悟る。段々頭にじんじんと痛む。
やっぱり母さんは空の味方しかしないのか。わかってたけどこういうときくらい平等に見てくれたっていいじゃないか。俺だって傷つくんだよ、一人の人間なんだ。もう心も体もボロボロ。
「ち、違うよ母さん...!」
母さんに何か言っている空の声を無視して走り出す。今日はもうなんも食べなくていいや、とりあえず家にいたくない。
鞄は持っているし制服もきている課題は部屋だけれどもうしょうがない。
靴の踵をふんだまま外へ出て走る、天気は快晴でどこまでも青く澄んでいた。
上を見るだけでアイツの顔がチラついてどうしようもなく泣きたくなる。「この世界はどこまでも美しい」とか言っている人が正直よくわからない、その人が見ている景色を否定するつもりはないし本当にそんなにきれいなセカイがあるなら見てみたいなとも思う。
今の俺のセカイはどう頑張ったって灰色だ。
走ってる間に駅についたので定期をだして改札を通り抜ける、ちょうどいつもより一本前の電車が来ていたので乗り込む。
普段は満員電車に乗っているけれどいつもより早い時間だから席がぽつぽつと空いている。真ん中に座るのは気が引けるので俺は端の方に座った。電車に揺られながら進んで行く、電車って乗っているとゆっくりに感じるのに実際は車より早いのはなんでだろう。
そんなことどうでもいいか、朝見つけた歌聞こう。
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あ、学校の近くの駅についた。やっぱり朝の曲はいい曲だな。今度この人の曲沢山聞こう。
改札を出て学校へ向かう。