でも、せっかくなら図書室の中の方が良かった。
 ここだと重いし、どうすることも出来ない。すると彼は萌が持っていた本を持ってくれた。

「重たそうだから代わりに俺が持つよ。何処に運べばいい?」

「あ、図書室に」

 萌がそう言うとさっさと図書室にある方向に歩いて行くルーカス。
 まさかのメインヒーローが自ら助けに来てくれるなんて。もしかしなくても脈あり? と思ってしまう。
 萌は慌てて追いかけて横を歩くが、原作のキャラだと変装をして地味な根暗男性を演じてはいるが、本来の彼は勇敢で優しいとなっている。
 つまり気になっている私が困っていたから自然と声をかけてくれたのかもしれない。

(流石、メインヒーローだわ。優しい)

 何処の誰かさんと大違いだろう。
 チラッと横目で見ると背が高くて意外とたくましい身体つきをしていた。
 隣国では皇太子であり、剣術も相当強いらしいから当然なのだろうけど。しかも声すらドラマCD同様に素敵な声をしている。
 眼鏡で隠しているつもりだろうけど、スッと鼻筋が高くて顎とか輪郭が整っている。
 イケメンオーラとも言うのだろうか? 正体を知っているからかもしれないが、それすらカッコ良く見えるから不思議だ。

「あの……俺の顔に何か付いているのか?」

「あ、いえ……親切な方だなぁと思いまして。ありがとうございます」

 ニコッと微笑むと目線を逸らしていた。しかし耳元が少し赤くなっているので照れているのだろう。あら、意外と可愛いところもあるのね?
 男らしくて、さり気ない優しさがカッコいいと大絶賛されていた彼だが、意外と照れやなところがあるなんて素敵だ。
 萌は心の中でニヤニヤとしながらも顔面に出ないように必死で我慢する。そうしているうちに図書室に着いてしまった。中に入ると誰も居ない。

「そこのテーブルに置いてくれると助かりますわ。ありがとうございます。もし良かったら名前を伺ってもよろしいかしら? 私はエイミー・ビアズリーです」

 さり気なく名前を伺うことにする。今のうちに少しでも距離を縮めないと。

「お、俺は……ルーカス・コレクトです」