「…ねえ、お兄ちゃん」
「んー?」
「私、お見合いしようかなあ」

パッとこちらを見た兄が目を見開く。

「お見合い!?誰と!?」
「店長の甥っ子さん」
「どんなやつだ。何歳?何の仕事?年収は?長男か?」
「30歳で建築士さんだって言ってたけど、まだ詳しいことはわからないよ」
「んー、そうか…」

兄は大きなため息を吐き、何か考えている様子で少し視線を浮かせていた。
そしてなぜか悩ましげに目元に手を当て、もう片方の手をパーにして私に向ける。

「いや、待ってくれ。もうちょっと俺のものでいてくれ」
「は?」
「あおいがほかの男のものになったら耐えられない」
「ほかの男のものにって…自分は彼女がいたくせに」
「うっ…そうなんだけどさあ。翔太にもちょっと妹離れしろって言われたし…あ、そうだ。今日は翔太が来るんだ」
「えっ」

兄の言葉に私の鼓動が跳ねるのと、インターホンの音が鳴るのは同時だった。