クールでイケメン御曹司は弱気な彼女を囲い込む

少し風が冷たくなった10月の金曜日
私は会社をみんなより早く退社しある場所へ向かう事がすっかり日常となっている



カラン、カラン

「お、穏海さん。こんばんは、今日は早いですね」

蓮さんの声を聞いてつい顔が綻んでしまう

「蓮さん、こんばんは。
仕事が一段落したから、今月は早く来れそうなんです。」

私が席に座ったと同時に、目の前に出てくるお気に入りのカクテル
一口、口に入れて目を瞑って味わうこの瞬間が私の至福の時間だ


“今週も仕事頑張った〜”
この時だけ心の中で自分を褒める事を許している


いつからだろう、こうして1人でここに来るようになったのは
そんな事を考えながら時折蓮さんと他愛もない話をするこの時間が最近は唯一の生きがいと言っても過言ではない

ふと時計みると時刻はまだ20:00
少し頭がふわふわしてきてしまった

昨日寝てないから、今日は酔いが回るのがはやいなー
今日は早めに切り上げよう

そんな事を呑気に考えながら、一切カクテルを飲む手が止まらない



カラン、カラン

「おやおや梨斗さん、お久しぶりですね。」

「蓮さん、お久しぶりです。いつものお願いします。」

「はい、少々お待ち下さい。」


ふと横に目をやると、まるで美術作品と錯覚するほど美しく男性が目に映った。

身に付けているものの格式の高さから、決して普通の人ではない。そしてそれに一切ひけを取らない凄まじいオーラを放っていた

夢中になってその男性を見つめていると、ふと目が合っていることに気付いた

その男性は、数秒私の顔を見ながら驚いた様な表情を見せ私の瞳を捕らえて離さない。

ボーっとしていた事に気付き慌てて目を逸らした
“私ってば、何じろじろ見ちゃってるんだ”

まるで彫刻の様に美しく整っている顔を見つめ過ぎて気づいたら顔が赤くなってしまった

つい自分の恋愛経験のなさを恨んでしまう