あなたと普通でトクベツなこと。



* * *


 八重と明緋はすり抜けるように人混みをかき分け、お賽銭箱からだいぶ離れた。


「この辺まで来たら大丈夫かな」

「はい」

「改めて久しぶりだな、八重!」


 修学旅行の時と変わらない、人懐っこそうな笑顔で笑いかける明緋。


「お久しぶりですわ。明緋さん、どうして東京に?」

「ばあちゃん家が東京だから正月はこっちにいるんだ」

「そうだったのですね。明緋さんもご家族と一緒ですの?」

「そうだけど、俺は大丈夫。友達と偶然会ったからって言っておくよ」


 友達。その言葉が嬉しいような、ちょっぴり寂しいような気もした。


「八重、あっちで甘酒飲めるんだよ。行ってみないか?」

「はい、行きたいですわ」


 それでもワクワクする気持ちは止まらず、二人は甘酒を配っているところに向かう。
 湯気が立ち込め、甘酒の匂いが漂っていた。

 二人とも受け取り、一口飲むとじんわりと体が温まる。


「うめえ!あったまるなぁ」

「ええ、本当に」

「八重は正月どうしてたんだ?」

「元日から毎年恒例の新年会があって退屈でしたわ」

「はははっ!ほんと顔に似合わず言うよなぁ」

「事実ですもの」