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八重と明緋はすり抜けるように人混みをかき分け、お賽銭箱からだいぶ離れた。
「この辺まで来たら大丈夫かな」
「はい」
「改めて久しぶりだな、八重!」
修学旅行の時と変わらない、人懐っこそうな笑顔で笑いかける明緋。
「お久しぶりですわ。明緋さん、どうして東京に?」
「ばあちゃん家が東京だから正月はこっちにいるんだ」
「そうだったのですね。明緋さんもご家族と一緒ですの?」
「そうだけど、俺は大丈夫。友達と偶然会ったからって言っておくよ」
友達。その言葉が嬉しいような、ちょっぴり寂しいような気もした。
「八重、あっちで甘酒飲めるんだよ。行ってみないか?」
「はい、行きたいですわ」
それでもワクワクする気持ちは止まらず、二人は甘酒を配っているところに向かう。
湯気が立ち込め、甘酒の匂いが漂っていた。
二人とも受け取り、一口飲むとじんわりと体が温まる。
「うめえ!あったまるなぁ」
「ええ、本当に」
「八重は正月どうしてたんだ?」
「元日から毎年恒例の新年会があって退屈でしたわ」
「はははっ!ほんと顔に似合わず言うよなぁ」
「事実ですもの」



