満咲の家柄の特異性は幼い頃からわかっているつもりだし、この新年会も毎年恒例だ。
 今更ダダをこねて嫌だと言える程子どもでもない。

 だけど、ふとした時に思う。
 なんて窮屈な身の上なのだろうと。

 その上、父は八重を溺愛しており必要以上に過保護である。警察という職業は恨みを買いやすいこともあり、警視総監の娘というのはターゲットにされやすい。
 そのこともあって八重は一人で出歩くことも許されない。必ずSPが付くのである。

 どう足掻いても自分は「普通」にはなれない。
 悲しくも受け入れざるを得ない現実であった。


「八重姉様」


 話しかけてきたのは従妹の李奈(りな)だった。父の弟の娘であり、満咲の分家にあたる。


「李奈さん、お久しぶりですわね」

「お久しぶりです!八重姉様、相変わらずお着物がよく似合ってるわ!」

「ありがとうございます」


 李奈は八重のことを慕ってくれる妹みたいな存在だ。


「聞いて、八重姉様。私来年から姉様と同じ高校に通えるかもしれないの!」

「まあ、そうですの?」

「幼稚舎から通う女子校じゃなくて共学の高校に行きたいって言ったら、八重姉様と同じ高校ならいいって。今受験勉強の追い込み中なの」