あなたと普通でトクベツなこと。



「八重、俺……」
「八重お嬢様!!」


 明緋が何か言いかけると、あのSPたちが走ってきた。

 それを見て時間切れだな、と八重は思った。


「明緋さん、もう行きますわね。今更ですが、あけましておめでとうございます」

「あ、そういえば言ってなかったっけ。あけましておめでとう」

「今年もよろしくお願いします」

「こっちこそ」


 深々と頭を下げてから顔を上げ、八重はにっこりと微笑んだ。
 最後に見せる表情は泣き顔ではなく、笑顔がいいと思った。


「この御守り、大切にしますわ」

「お、おう……」

「本当にありがとうございました」


 くるりと踵を返して歩き出す八重の背中に向かって、明緋は叫んだ。


「八重!今日はありがとう!またな!」


 また、と言ってくれることが嬉しかった。
 胸の奥がきゅうっとなった。


「はい!またお会いしましょう」


 明緋と過ごせる時間は、何よりトクベツだ。
 何気ない普通なことが、全部トクベツだと思える。

 それはきっと、明緋だから感じることなのだろう。
 八重は御守りと芽生えた思いを胸に抱きしめて、両親の待つ場所へと戻って行った。

 そして、神様に感謝を捧げた。


――彼と会わせてくれてありがとうございます。願わくば、来年も一緒に過ごせますように。




fin.