あなたと普通でトクベツなこと。



 そう言って男は八重の細腕を掴んだ。ザワッと鳥肌が立った。


「やめてください……っ」


 振り払いたいのに、振り解けない。
 着物を着ているので走り出すこともできないし、そもそも足がすくんで動けない。

 似たようなことは昔からあったが、いつも那桜と鏡花が傍にいて助けてくれた。
 でも今は二人ともいない。


「だ、だれか……っ」

「――テメェ!!八重に触んなっ!!」


 赤髪のヒーローが現れた。


「八重から離れろこの野郎!!」

「な、なんだこいつっ」

「絶対ヤベー奴だ!逃げろ!」


 突如すごい剣幕で現れた赤髪のヤンキーにビビった男たちは逃げ出してゆく。


「八重!!大丈夫か!?」

「明緋さ……っ、ううっ……」

「八重!?どこか痛いのか!?」


 慌てる明緋に八重はふるふると首を振る。


「違うんです……自分が情けなくて……」

「情けない?」

「一人では何もできず、守られてばかりで……それなのにあなたを傷つけました……本当にごめんなさい」

「八重……」


 ポロポロと涙をこぼす八重の手を、明緋は優しく取って真っ直ぐ見つめる。


「八重、俺は本当に何とも思ってねぇよ?色々言われるのは慣れてっからさ」

「でも……わたくしが普通じゃないせいで」

「普通じゃなくてもいいじゃねーか」