あなたと普通でトクベツなこと。



 そこでSPたちに見つかってしまった。


「明緋さん!離れてください!」

「えっ……」

「八重お嬢様、何をなさっていたのですか。帰りましょう」

「その男は何者ですか?」

「友達です!」


 八重は明緋を庇うように前に立つ。
 SPはサングラス越しだが、明緋に訝しげな視線を向けていた。


「そんな赤い髪をしたヤンキーがお嬢様の友達?お嬢様を誑かそうとしているのでは?」

「そんなこと!明緋さんに失礼ですわ!」


 八重はらしからぬ大声をあげた。


「明緋さんに謝りなさい!」

「八重、いいよ。別に気にしねえって」

「でも……っ」

「おい、お前」


 SPの男は明緋の前に立ち、低い声で言った。


「八重お嬢様はお前みたいな低俗なヤンキーが接していい方じゃない。身の程を弁えて二度とお嬢様には近付くな」

「……っ!」

「お嬢様は特別な方なんだ」


 八重はその言葉を聞いて、目眩がするかと思った。

 特別って何なのだろう?
 自分は他の人と何が違うというのだろう?

 ただ、満咲という家に生まれただけだ。
 たったそれだけのことのはずなのだ。

 それなのに、どうして「特別」というだけで大切な人を傷つけられなければいけないのだろうか。


「……っ、もう嫌です……!!」

「――八重!?」

「お嬢様っ!!」


 八重はSPの手を振り払い、その場から逃げ出した。