新年早々、家には色んな人が集まっていた。
 旧華族の末裔であり代々警察の上層部を担ってきた由緒正しき家柄である満咲(みつさき)家。

 祖父は元警察庁長官、父は現警視総監、母は華道家元の妹であり自身も一流の華道家。
 華々しい功績を持つ家族の元には色んな人物が集まる。

 満咲の親戚はもちろん、警察関係者、その他関係者色んな人が新年の挨拶に訪れる。


八重(やえ)お嬢様も17歳になられましたか。いやはや、なんとお美しい」
「凛と咲く一輪の花のようだ」
「うちの息子などいかがでしょう?」


 自分に群がる様々な思惑を持った大人たちに対し、八重は終始笑顔でのらりくらりと交わしていた。

 大抵満咲に近寄る者は、満咲の多大なる財産目当てである。どうにか取り入ろうとおべっかを並べ立てる者が後を絶たない。

 能面のように笑顔を貼り付けながら、満咲家の一人娘である八重は内心こんなことを思っていた。


「(めんどくさいですわぁ……早く終わらないかしら)」


 艶やかで美しい黒髪、伏目がちな長いまつ毛、日本人形のような整った可憐な容姿を持ち、家柄も相まって「八重姫」と称される彼女だがその内面は意外にも強かだった。