あれ以来、光輝くんと話す機会が増えた。

漫画という同じ趣味が見つかり、それからは徐々に話題が増えていった。

向こうからはただの漫画好き同士としか思われていないかもしれないが、それでも私はお近付きになれたことが嬉しくて嬉しくてたまらなかった。

「しーみずさん!」

「うわ!びっくりした!」

「へへ、脅かしてやったぜ」

「もう、なんですか?」

「そうそう、あの漫画の新巻読んだ?」

「読みました!もうあのシーンが最高で!」

「それ!あのキャラの決めゼリフかっこよすぎた」

「ほんとにそれです」

「ふふ、やっぱ清水さんと話すの楽しいや」

こんな言葉で喜んでしまう私はやっぱりちょろい。

「あ、ありがとう」

「ねえ、清水さんのこと下の名前で呼んでもいい?」

「え!?」

「だめ?」

「え、いや、い、いいです、」

「よし、じゃあ、これからはしほちゃんで!」

初めて好きな人から下の名前を呼んでもらい、思わず顔がにやける。

キーンコーンカーンコーン

「おっチャイム鳴った、じゃあね」

と言って、光輝くんは平然と席に着く。

私は授業中ずっと上の空で、彼が呼んでくれた自分の名前を脳内でリピートする。

嬉しさが頂点に達した。

ニヤけが止まらない。

そうしてるとすぐに授業は終わった。

放課後になり、光輝くんが

「しーほちゃん!」

まだ慣れない呼び名に恥ずかしさを感じながらも返事をする。

「一緒に帰ろーぜ」

「い、いいよ」

「いやー、買いたい漫画があってさ、ちょっと本屋に付き合って」

「わ、分かった。」

「あったー、これこれ」

「あ!それ!買うの?すっごくおもしろいよね!」

「ふふ、うん」

「よし、お目当ての漫画も買えた事だし、俺、これから用事あるからもう帰るね、ばいばい!」

「ば、ばいばい!」

好きの気持ちはどんどん大きくなっていく。

向こうが私のことをなんとも思っていなくても、私は彼と一緒にいられるだけで嬉しい。

そんなことで、この時の私は、浮かれすぎてしまっていたのかもしれない。

後にこんなことを引き起こすなんて。