翌朝、早起きして、学校に行った。

漫画を読み終えたあと、急に、ほんとに借りて大丈夫だったのだろうかという不安が押し寄せ、もう手遅れだけど、せめても早くお返ししようと思っての事だった。

まだ、教室には誰もいない。

光輝くんが登校したらすぐに返そう。

静まり返った教室で私は何度も光輝くんに漫画を返すシチュエーションをシュミレーションした。

ふと、教室の窓の外を見ると、まだ日が登りきっておらず、星がうっすら見えた。

なんだか、見惚れてしまい、そのまま数分がすぎたと思う。

いつの間にか日が昇っていて、教室にもちらほら生徒が集まってきていた。

もう、光輝くんも登校していた。

しまった!せっかく早く来たのに意味がないじゃない!

急いで、袋に綺麗に入れた漫画を持って席をたった。

「あの、光輝くん、漫画、ありがとうございました。」

「ん?ああ、いいよー、おもしろかった?」

「はい!もうとても!」

読んだ内容を思い出して、ついつい興奮した声が出てしまった。

「ふふ、そんな顔した清水さん初めて見たよ」

うわ、変な顔じゃなかったでしょうか。

「あ、あと、代金を、、」

「え、いいよいいよ、大丈夫だから」

「いや!そんなただで読ませていただく訳には!それにこの間、シャー芯も貸してもらったし、、」

「んー、そこまで言うなら、お金はいいから、今日の帰り、お礼として、おおすめの漫画教えてよ、清水さん、たくさん漫画知ってそうだし」

「え、でも、、」

「いいのいいの、じゃ、決まりで」

えー。強制的に決められてしまった。

申し訳ない。

漫画を教えるって、そんなことで良いのだろうか。

心残りがある中、授業が終わり放課後になった。

「しーみずさん!本屋行こ!」

「え、あ、うん」

「あの、」

「ん?」

「ほんとに、こんなこと良いんですか?」

「いいよー、さ、はやく教えて!」

「えーと、どんなジャンルが良いですか?」

「うーん、戦闘系で!」

「じゃあ、これとか面白いですよ、あー、あとこれも!うわっ、これも捨てがたい、、、あ!そっちのも感動するし!あれも良い」

「ふはは、清水さん、漫画のことになるとすごくしゃべるね」

「うわあああ、ごめんなさい、私」

「ううん、かわいい」

え?聞き間違い?かわいい?

急に顔が火照ってきた。

というか、お礼のつもりでいたけど、これはたから見たらデートというものでは!?

いや、私だけが一方的に好きなだけだけど。

「ん?どうしたの?清水さん顔赤いよ、体調大丈夫?しんどい?」

「あ、ああ!いや!違うんです。大丈夫です。
あと、やっぱり悪いんで、今日気に入ったのがあったら一巻だけ私に買わせてください!」

「えー、いや、大丈夫だよ」

「いえ!だめです!私の気が済みません!」

「はは、じゃあお言葉に甘えて、ありがとうございます。」

「んー、じゃあ、これにしようかな、」

「はい!いいと思います!じゃあ買ってきます!」

よっかた、これで借りが返せた!

「今日はありがとう!いろいろ漫画教えてくれて」

「いえいえ、こちらこそ!楽しかったです!」

「ほんと?良かった」

「じゃあ!また明日、感想言わせてね!ばいばい。」

「さようなら」

はあああ、最高の時間だった。

まだ少し顔が熱い気がする。