ATTENTIONプリーズ♪トゥルルルルルッルルルル(cv斉藤壮馬×2)

どろぴく×イツメン(原作)のクロスオーバーなので自動的にどろぴく黒子の存在が途中から消えます、はい。
流血表現あり。死ネタではない。
時空は原作イツメンの吸血鬼戦or伝染呪病 後くらい(曖昧)。
イツメンとどろぴくを対等な立場にするため(?)にどろぴくも高校設定。
ベテルギウスでますよーーー。
え?なんでこんな意味不なコラボさせたって?
そんなの私得だからに決まってんだろ☆
推し(イツメン)と推し(どろぴく)のコラボ書きたかったんだよ。みんなも推しと推しが絡むと嬉しいだろ?
でもあくまで叉優が主人公。今回イツメンの主人公(金光)には主人公の椅子をお譲り頂いたのよ。本人が「え?主人公の座?そんなんいらんいらん、譲るわ。私はギャグ狂主人公なのだから」って言ってた気がするし(幻覚)

以上。本編へごー

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叉優「子供の……泣き声?」

どろぴく6人全員でショッピングを楽しんだ後の帰り道、路地裏の細く薄暗い道から聞こえる小さな泣き声に気がついたのは叉優だった。いち早く気づいた叉優の言葉で気づいた他の面々も、耳を澄ませ路地裏を凝視する。そんな中、冷静に状況を分析して警戒を示す楼成が言葉を繋げる。

楼成「本当に子供かな…」
椿月「確かに。子供の泣き声で誘うjjiかもよ?」
璃百「その場合怖すぎるでしょ」
魅麗「最近不審者多いもんね」

それぞれの顔を見合い立ち止まっていると、それまで一言も発さずに路地裏を見ていた黒子が呟いた言葉で、また四人が頭を抱える事となる。

黒子「叉優が、子供かもしれない泣き声を放っておけるわけないでしょ」
魅麗「うう、それもそう…」
楼成「叉優は優しいからね…」
叉優「もし、虐待でもされてる子供だったら…」

自分の事のように顔を歪ませる叉優を見て、相変わらずだと、椿月は心の中で息を吐いた。椿月は、叉優の善良で困った人を放って置けない所を美点であり尊敬する所であると強く思ってるが、同じくらい、それによって叉優が苦しまないか心配してもいた。だが、叉優は決めた事は納得のいくまでやり続けるので、もしもの時は自分たちで止めれば良いと、とりあえずは結論付けた。それぞれの欠点を補い合い、美点を高め合う。それがどろぴくというグループなのだ。

魅麗「警察無沙汰にならなければいいんだけど…」
黒子「世の中そんな平和ちゃうやろ〜」

さっと取り出したスマートフォンで足元を照らしながら、路地裏を進んでいく。少しづつ泣き声が大きくなってきている事を確認し、間違いなくこの路地裏である事がわかり、徐々に歩くスピードも早くなってゆく。暫く歩くと、灯が照らしたその先に、小さな下駄を履いた足が見えた。急いで駆け寄ると、5〜6歳くらいの小さな子供が蹲って泣いていた。着ている服は上等そうな着物であるが、ところどころ泥がついて汚れている。こちらに気づいた女児はというと、怯えた様子でこちらをずっと見据えていた。ぱっちりとあいた大きな目から流れる涙は止まっていないが、それでも誰かが来たことに対する安堵が見えた。いてもたってもいられなくなった叉優がそっと女児に近寄る。怯えてはいるが、逃げる様子は見えない。叉優の手が女児に触れられそうなほど近づいた時、異変は起こった。

黒子「なんで、歪んでんだ…ここただの路地裏だぞ!?」
椿月「はぁ?何の話……っ!?」

黒子は女児の背後を見て目を見開き、普段とは違う口調で呟いた。それを聞き取り、意味を聞き返そうとした椿月の言葉を妨げるかのように地面が揺れ出した。立っているのがやっとなほどの揺れの中、叉優は懸命に女児に手を伸ばし、抱き抱えた。

黒子「っ、最悪だ。叉優!その子、何があっても手を離しちゃだめだよ!」
叉優「そんな事言われなくたって…」

その言葉を最後に周りを眩しい光が囲み、光が拡散された後にその場に居たのは、黒子ただ一人だけだった。

黒子「…大変な事になった、早く方法を見つけないと」

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《??? 森の中》

叉優「え、ここどこ…」

急に光に包まれたかと思えば、木々に囲まれた荒地のような所に場所が変わっていた。変わらないのは腕に感じる重さくらいだろうか。周りを見渡せば同じように驚愕しているメンバーがいた。だが、一人だけ見当たらない事に気づき、声を発する。

叉優「黒子は!?」

意外にも、その問いに対する答えは直ぐに聞こえた。自身の少し下から。

「あのおねぇちゃんは、あの世界からでられないんだよ。」

くいっ、と叉優の服を掴みそう答えた幼女からは、先ほどまでの怯えは一切感じられなかった。まるで人が変わったかのようにまるっきり態度の違う女児に驚きつつ、コミュニケーションとして、とりあえず名前を聞く。

叉優「私は涼風叉優。あなたの名前は?」
ミカ「ミカ!おねぇちゃんたちを、こっちに連れてきちゃってごめんなさい。巻き込んじゃってごめんなさい……」

ミカと名乗った子供は、身振り手振りでいろいろと伝えようとしているが、あまり叉優達には理解できなかった。唯一わかるのは、今自分たちが居る所は異界である事くらいだった。

楼成「とりあえず、話のわかる人を捕まえるのがいいと思う」
璃百「そうだね…。街の方にでてみる?」

携帯の電波すら届かないような山奥の森。人気があるわけでもなく、なんとなく動物も見なかった気もしてくる。ますます不気味に思えてきたので、とりあえず山を下りる事にした一同は、途中で、不思議な光景を目の当たりにする。

魅麗「こんな森の奥に家があった跡…?」
楼成「相当な大きさだよね…これ。」
椿月「学校とかの敷地レベルじゃんか…」

明らかに何かがあったであろう跡。その場所だけ周りの植物が茶色くなっており、落ちている煉瓦の上に灰がかかっている事から、おそらく火事で無くなった建物なのだろう。そして不思議な光景とは、これだけでは止まらなかった。周りにあきらかに人間でも動物でもない物がうじゃうじゃと湧いていたのだ。

椿月「きっっっっっも!!!」
楼成(初めて聞いた椿月のこんな声)
ミカ「これは“妖”だよ!おねぇちゃんたちに悪いことするかもしれないから気をつけないと…」

ミカが説明し終わる前に、叉優達は大きな影に寄って道を塞がれた。ところどころに目がついていて、どれも違う方向を向いていて気持ちが悪く、手も至る所から沢山でている。そんなフィクション世界に出てくるような怪物は、ギョロリと目を一人に向けた。……叉優の腕に抱かれたままのミカだ。ミカはその目にいち早く気づき、叉優から降りようとしたが、叉優は腕に力をこめ、優しく笑いかけた。

叉優「大丈夫。必ずわたしが守るから」

叉優とミカに一目散に向かってくる無数の腕。その数々から距離を取り、他の四人から少し離れた位置に魔物を誘き寄せる。この魔物…妖の影響か、少しづつ視界が悪くなってきた。濃い霧に視界を奪われながらも叉優は、ミカを抱える腕の力を決して抜かない。

叉優(離さないって言ったから)

だが、叉優とて普通の高校生。しかも文化部であり、運動神経が断然にいいとも言いきれない彼女にできる事はやはり限られていた。足が絡まり転びかけ、その隙に妖の腕が容赦なく伸びてくる。遠くで仲間の叫ぶ声がするが、そちらに逃げることのできるほどの時間もない。あゝ、終わりかもしれない。腕の中のミカをぎゅっと抱きしめながら叉優は目を瞑った。

「させねーよ。」

そう声が聞こえたかと思えば銃声が響き、耳を刺す悲鳴が上がる。そっと目を開けると、悲鳴をあげている妖の真上に丁度誰かが飛んだ所であった。その誰かはそのまま妖を持っていた刀で細かく刻みこみ、そのまま舞うように着地し、刀を振り鞘になおした。

「えっと、怪我ない?」

呆気に取られている叉優に、刀をしまい終わったらしいその人が、顔を覗くようにして声をかけてきた。その後ろから「終わったな」と先ほど聞いた声が聞こえてきた。どうやら初めに聞こえてきた声の主はそっちだったようだ。帯刀している目の前の彼は、自身の背後にいるであろう人に対してわかりやすく舌打ちし、振り向いた。帯刀している男の後ろからは顔の整った緑髪の男が現れた。銃を持っている事から、初めの銃声は彼の仕業だった事がわかった。

叉優「えっと…」
ミカ「おねぇちゃん?助けてくれてありがとう!」
帯刀している男(?)「どういたしましてー。怪我はない?」
緑髪の男「俺は!?俺も助けたけど!?」

帯刀している男の人がこちらにも目を向け、不思議そうに話しかける。

帯刀している男「なんで、こんなところに大勢で…?」
緑髪の男「どうせ心霊スポットとかだろ」
帯刀している男「残念ながらここら一帯に心霊スポットもパワースポットもない。てかそんなもん作られたら困る。……此処、九条家本拠地の跡地だぞ(ボソッ。まぁいいや、なんでここにいんの?」

詳しく教えてくれと言われたので、最初から詳しく説明する。説明が終わったタイミングで心配した面持ちのまま四人がこちらに走ってきた。「なるほどね…」と帯刀している男は手を顎に当てて考え出した。暫く待っていると、とりあえず自己紹介から、とこちらに微笑みかけてきた。

帯刀している男「私はくr…「俺松井虎飛呼な。よろしく」お前は空気が読めないのか…」
松井「いやわざとだから気にすんな」
黒子「( ꐦ ・֊・ ) 」

緑髪の顔が整った青年──松井に再度舌打ちしたもう一人の青年は、仕切り直すように咳払いをし、もう一度口をひらいた。

黒子「私は、黒子。さっきみたいな悪い魔物を倒す組織に入ってる混ざり物。まぁ、そんくらいかな。そっちも名乗ってもらえるかな。」
叉優「え、うん、はい…」(混ざり物…?)

各々名前だけを名乗り、松井、黒子と名乗った男をじっと見る。松井は顔については整っていて、所謂イケメンである事くらいしか言うことは無いが、黒子に対しては違った。何となく、この場に居ないメンバーに面影が似ている気がしたのだ。瞳の色も髪の色も背も違うのに、どことなく雰囲気や声は「黒子彩香」のそれで、別人なはずなのに、別人だと断言することが出来ない。

叉優(別人に決まってるのに…)
黒子「とりあえず状況説明しないといけないし、組織に戻るか」
松井「報告書出さねぇとダメかな」
黒子「怒られたいならどうぞお好きに^^」

確かにこんな森奥に突っ立っておいて、また先程のような事が起こらないと断言は出来ないし()、何より疲れてしまう。なので大人しく2人の後ろをついて山を下りていった。山を下りる最中に、簡単にこの世界や「妖」については教えて貰えた。
この世界には「人間」の他に、「神」と「妖」という三つの種族が存在しているらしい。人間が神を見るには「神力」、妖を見るには「妖力」が必要で、それらを生まれもった人間はあまりいない為、神と妖を知らずに生涯を終える人がほとんどだと。

松井「で、妖は妖力を吸って生きる糧にするんだよ。まぁ、妖力が食事みたいなもんな」
黒子「で、妖力を手っ取り早く沢山取る方法ってのっが、妖力の強い人間を喰らう事。だから妖は人間を襲うんだよ」

そんな妖に対峙する為にはどうすれば良いかを考えた昔のお偉いさん達は、自分達の妖力を武器に込め、妖にある「核」という部分を壊せば殺す事ができる事に気がついた。

黒子「でも一歩間違えれば自分たちも喰われる。そんな危険を背負って普通の人たちを守るのが、私達がいるPFAって組織だよ」
松井「今行ってんのがそこな?で、俺からも一個聞いていいか?」
魅麗「答えられる事なら」

すごい顔をしながら見ている黒子(呼び捨てでいいと言われたので)の視線をもろともせず、松井は私達に疑問を投げかけてきた。

松井「なんでこの世界の者じゃない筈のお前らの妖力がこんなに高い?それに、その子供は…」
黒子「松さん、順序が違うでしょ。そもそも私達がわからない事をその子達に聞いてどうするの。そんくらい考えて発言しろや現当主様??」
松井「う、うるせー!煽りに当主を使うな!!」
黒子「引っかかりやすい単細胞だな」

なにやら喧嘩が始まりそうな二人に視線で訴えると、すんなりと手を引いた黒子がこちらをまっすぐ見据えた。そして視線を戻さぬまま、私に言った。

黒子「そういえば…さっきからずっと思ってたんだけど…君、善人すぎるね」

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《異界 PFA総合局》

笑顔の黒子に善人と言われた後、とりあえず入れと、大きな建物の中に入った私達は、前線第二局と書かれた札が下がる部屋に通された。報告書を出してくるからと部屋を出た松井を見送り、奥に座るように施された。言われたままに座り、出された茶菓子に手をつける。お茶を出してくれた人もお盆をもったまま黒子の隣に座った。その人に対して黒子が呟く。

黒子「なんでしれっと金光もすわんの…」
金光「書類上では私がリーダーだからね!」

「で、どうしたの?」と金光と呼ばれた短髪の女性が元気よく黒子に聞いた。ため息を吐きながら状況を説明してくれる黒子の話をこちらも大人しく聞き、自分の認識と違いがない事を確認した。

黒子「ってわけで、この子達は時空すら超えてしまった迷子って事。」
椿月「迷子ではない」
金光「んーなるほど。で、その子供がトリガーなのは確かだ」

状況を理解した金光がお茶のおかわりを注ぎながらミカちゃんを指す。突然自分の話になってびっくりしたのか、ミカちゃんは近くにいた黒子にしがみつく。その時に髪を巻き込んだのか、黒子が呻いたが、金光が無視したのでこちらも触れないでおいた。

黒子「ミカちゃん、痛い」
ミカ「あ、ごめんなさい…」

ミカちゃんはえらく黒子を気に入ったようで、黒子の膝に座って黒子の髪を弄ってあそんでいる。そのミカちゃんの髪を器用に編み込む黒子を横目に、金光にミカちゃんの事を詳しく説明した。それを受けた上でこの世界と照らし合わせると、少しずつ見えてくるものがありそうだ。

楼成「ミカちゃんが真っ先に狙われたのはその…妖力のせいなの?」
璃百「高い妖力を狙うならそうなのかも…?」
金光「んっとねー、多分あの子はそうじゃないと思う。」

楼成と璃百の言った事を導き出したのは私や椿月、魅麗も同じだったようで、同じように頷く。だがその言葉はやんわりと否定され、金光の視線は私たちからミカちゃんと黒子の方へと移った。

金光「神力の事は聞いたんだっけ」
魅麗「まぁ、やんわりと」
椿月「神様を見れる力…だっけ」
金光「大まかにいえばそうだね。妖は、妖力も好むけれど、それ以上に神力を好むの。妖からすれば神力はご馳走。毎年神を喰らおうとする妖も現れる」

わざわざ今説明されたとなれば、そういう事なのだろう。おそらくミカが神に近い事を知っていて喋ろうとした松井を、黒子が止めた理由も分かる。ちらりと金光を見ると、その淡い赤の瞳にはぼんやりと黒子が映っていた。黒子が映っているはずなのに、金光はどこか遠く、黒子では無いものを見ている気がした。

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《異界 PFA総合局 前線第二局》
sideなし

黒子「申し訳無いけど、私仕事あるからさ。金光、ごめん」
金光「おkおk!黒子の責任じゃない訳だしさ!一思いに妖祓っちゃえ!」
ミカ「お兄ちゃん行くのー?ミカもいく!」
黒子「後で遊んであげるから、いい子で待ってて?」
金光「育児黒子草w」

もうそこそこな時間帯で、自分達の世界に帰れるようになるまでは、最低限の衣食住を揃えないといけない。これからどうするかを考えようとしていた所で黒子は担当任務の時間となった為、離席することとなった。初めは自分も行くとわがままを言っていたミカも、弄った髪をそのままにしていてくれるなら、と渋々黒子から離れ、叉優に抱きついていった。

魅麗「ミカちゃん可愛すぎ…!」
金光「黒子…髪型崩れない様な任務?てか誰と?」
黒子「まぁ、下見みたいなもんだし、髪型は大丈夫だと思う。相手はねぇ…大崎です」
金光「あゝ…なら安心か」

苦笑いをしながら刀を腰に携えた黒子がドアの前に立つ。黒子は金光と一言二言交わした後、任務に出て行った。それをミカはずっと手を振って見送っていたのだった。

璃百「ミカちゃん、黒子がすごいお気に入りだね…」
ミカ「うん!ミカね、お兄ちゃんの、ね…」
叉優「……寝た」

何かを懸命に伝えようと口を開いたミカはそのまま、叉優の腕の中で眠ってしまった。小さい体でよく疲労に耐えたものだ。起こさぬ様にそっとソファに降ろし、毛布をかけてあげておく。

金光「とりあえず、今日はここに泊まってよ。シャワーもあるし、予備のTシャツとかもあるから。」
叉優「なにからなにまで…」
魅麗「助けてもらった方なのにね…」

申し訳なさそうに眉を八の字にする叉優と魅麗に金光は明るく笑いかけ、冷蔵庫の中身を確認しに行った。台所から戻ってきた金光が買い出しに行ってくると、扉を開けようとした瞬間、先に扉が開き、第三者の声が響いた。

「俺任務すっぽかしちゃった!!!!!どうしよ!!!金光!石川!!」
金光「あぁぁぁぁ鼓膜がぁぁぁ」

蹲る金光の前できょとんとする元凶である青髪。5秒ほどして状況を理解したのか、再び大声で叫び出した。

柳原「どうしよう!!金光が俺のせいで死ぬ!!」
金光「軽率にトドメを刺すな…やなぎ、学習しろ…」
柳原「しっかりしろ金光!!俺は、俺はまだお前に…この前のプリン食べた事を謝ってないんだ!!」
金光「それお前の仕業か…」


椿月「なにこの状況」
松井「俺が聞きたい」←帰ってきた

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《異界 PFA総合局前戦第二局》

松井「それで?金光の死因は?」
柳原「俺の大声」
松井「後で清原処方しますねー」
金光「墓は建ててね♡」
柳原「金魚の隣で良いか?それかトマトの横」
金光「金光<トマト<金魚 !?」

魅麗「癖が強いのが増えたね」
楼成「魅麗も負けてないと思うよ」

金光に連れられ5人の前の席に座った、鼓膜破壊常習犯、そう呼ばれていた突如現れた高身長の男は、自分で冷蔵庫から取り出した羊羹を突きながら自己紹介をしてきた。

柳原「俺、柳原貴之。みんなと一緒でやなぎってよんでいいからな。よろー。お前らの事は黒子に聞いたから大丈夫だ!」
松井「俺の羊羹じゃね、それ」
金光「こんまえお前やなぎの食べてたやん」

椿月「なんか…自由だね」
璃百「思った。」

訳ありの客人がいるにも関わらず呑気に羊羹をつつくこの光景に慣れさえしてきたが、まだ何一つ解決していなかった事に気づいた椿月が、金光に喋りかける。

椿月「元の世界に戻る方法ってあるの?」
金光「え、知らんww。黒子が見つけたんじゃないの?」
柳原「んぇ!?金光しってんじゃねぇの!?」
松井「え、お前らもしらねぇのかよ!?」
5人「……」
「全く…確かに仲間を信頼しろとは言ったけどさ…そうじゃないんだよ…」
金光「石川!!」

今日なんど目かもわからない突然の第三者の声。扉の向こうにたっていたのは、目立つ黄色と橙の髪と特徴的なピアスをした女性だった。

魅麗「あーもうどんどん人出てくる」

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翌日
《異界 PFA総合局前戦第二局》

叉優「眠れた?」
椿月「……全然」
魅麗「家のおふトォんが恋しい…」

結局あの後、石川と呼ばれた女性がテキパキと準備を進めてくれたお陰で、時計の長い針が10を回る頃には寝台につくことができた。だが、疲れで睡眠に入れたのは初めの数十分だけだった。夜中なのにも関わらず、ここ第二局から出入りする音や声が聞こえ、遅くまで書類を書いているキーボードっを打つ音も鳴りっぱなしの一夜だったのだ。

叉優「しかも朝起きて電気つけたら黒子床に寝てるし…」
金光「あはは…黒子が床に落ちてる事はいつもの事なんだよ〜」
黒子「物扱いすんなし」

なにせ、「PFA総合局」なので、PFAに所属する大勢の人間が集う場なのだ。夜中になれば、徹夜明けでゾンビの様にクマができたままフラフラ帰る職員も少なくないそう。

石川「流石にここに何泊もしてもらえないからさ、今日からは、イツメンのシェアハウスにきてもらうね。私達、昼間は学校あるしさ」
叉優「学校……」
魅麗「学校……!?私たちどうなるの!?成績は…!?」

自分達っを異界に送った鍵となるミカや、意味のわからない状況下に置かれていた事で、完全に忘れていた自身の学校を思いだし頭を抱える二人。その横で椿月は少しだけ肩の荷が降りた気がした。

椿月(学校行かなくて済む…)
黒子「そんなに行きたいならくれば?センセーに話通すくらいできるよ?」
楼成「否、普通そんな事ありえないでしょ…」
璃百(余計な事しなくていいいいいい…‼︎)
prrrrrrrrrrrrrr…
セン『なんでお前が俺の携帯番号しってんだ』
黒子「えへ。で、かくかくしかじかでして」
セン『……まぁ、5席くらいなら余裕で用意できるな』
黒子「わーセンセーいけめーん。」
セン『いいか?くれぐれも神力「また後でー」

黒子「いいって!」
璃百「先生イケメンなの?」
楼成「食いつくところそこじゃない」

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《異界 PFA総合局前戦第二局》

黒子「一応制服は貰ってきたけど…」
石川「サイズ違かったら言って?どうにかするよ」
魅麗「どうにかとは?」
叉優「ま、まぁまぁ。」

5人はそれぞれ自分に合いそうなサイズの制服一式を抱え、別室に戻っていく。その間、ミカはじっと黒子の膝に乗ったまま3人を見つめていた。

ミカ「ねー、おにぃちゃん達ー。ミカのはー?」
金光(言うと思ったー)
石川(小さい子ってみんなこんなんなのかな…)

叉優達が着替える事を理解したらしいミカが、自分の分はないのかと訴えかけてくる。この年頃の子供は皆、年上のマネをしたがるものだ。言うかもしれないとは思っていたものの、それどころではなかった石川と金光は目を見合わせた後、苦笑した。

石川「ごめんね、ミカちゃんのは「ミカはー、どんなのが着たい?」黒子?」

申し訳なさそうにミカに視線を合わせ、座り込んだ石川の謝罪の言葉を、黒子が遮る。黒子の目線はミカの髪を弄る自身の手から変わっておらず、そのままミカの頭を優しく撫でた。

ミカ「んーと、すっごく可愛くてね、あのね…叉優おねぇちゃんみたいになれる服!!」
石川「……はは、可愛い」
黒子「そっかぁ、じゃあさ、一緒にデザインしようか」
ミカ「でざいん?」
黒子「そそ。お洋服を書くの」

膝の上のミカをそのまま抱き抱え、近くのテーブルに紙とぺんを持ったまま移動する。ぽかん、と目を丸くしたままの金光の手を、状況を飲み込んだ石川が引いて、黒子の向かいに座る。黒子が書いた簡単なマネキンのイラストを、ミカが装飾品で飾ってゆく。5分もすれば、立派なドレスのイラストが出来上がった。

ミカ「そう!こんなのが来たい!叉優おねぇちゃんみたいに大人っぽくてね、かわいいんだよ!」
黒子「確かに…叉優にも似合いそうではある」
金光「で、黒子どうするの?」
黒子「作るけど」
石川「……だろうね、今日黒子非番だし、部活ないもんね…」

イラストの載った紙を掲げて、目をキラキラさせているミカの髪を櫛で漉きながら、黒子は金光の問いに答える。幸い黒子はPFAとしては非番であるし、文化祭を終えた文化部は練習もなかった。それに、演劇部で使う衣装の多くは黒子が作る為、裁縫の腕は決して悪くはない。黒子自身、「何かを作り出す」のが好きな性分であるので、好きでやっている事に変わりはないのだろう。

ミカ「おにぃちゃんが作ってくれるのー?」
黒子「ミカが良ければ、作る時…お手伝いしてほしいかな」
ミカ「うん!!やる!!」
黒子「じゃあ…あの時計の短い針が“4”を指したら、この紙を持ったまま、“おにいちゃんの所に行きたい”って願ってごらん。」
ミカ「わかった!!」

そう言って黒子はどこからか文字がずっしりと並んだ紙切れを取り出し、ミカにしっかりと握らせた。それを見た石川が少し顔を曇らせる。

石川「黒子…4時になったらミカちゃんをここから学校に転送する気?」
金光「それって転送の札だったの!?」
黒子「大丈夫大丈夫。この子の神力は凄まじいから。低級の妖は寄る事すら出来ないし、何より私がこの部屋には結界を張っとくんだから。防衛の神のお墨付きだよー?だから大丈夫☆“あいつら”が来ない限りはね」
叉優「なんか、物騒な事聞こえたけど…」
椿月「着替えてる間に何があったん?」
楼成「あいつら…?」

着替え終わった5人が次々と別室から出てくる。サイズはぴったりだった様で、心配はいらなそうだ。そんな5人を見て、石川と金光が重い口を開けて話しだす。

石川「まぁ、みんな妖力が強いんだし…言っておいたほうがいいかな。」
金光「うん…PFAが最も危険視している組織…「ベテルギウス」ってのがあるの。知能が高すぎる妖が軸となって組み立てている組織だよ。軸となってるのは…6人…今は4人か。」
黒子「う゛……」
金光「勝手にダメージ受けないで」
叉優「?」

石川と金光の話をまとめるとこうだ。
知性の高い妖達が集まった組織「ベテルギウス」。その組織では、上から“一等星”“二等星”、その他と階級があり、一等星が組織の軸となっており、現在の一等星は4人。一等星の指示により、沢山の妖が各地に配置され、今も尚、その目的は詳しく分かっていない。

金光「分かりやすく例えれば、鬼〇の刃の上限の鬼がここで言う一等星って感じかな」
璃百「初めからそう言って欲しかった…」
黒子「ベテルの目的…世界征服は無いと思ってるけどね…」
叉優「一番ありげな話じゃないの?征服とか、いかにも悪役ですって感じで」

今は目的はどうでもいいんだよ、と話を終わらせた黒子は目線だけ時計にやり、そろそろかな?そう呟いた。

叉優「嗚呼、学校の時間か…」
椿月「ナンデ,イセカイニキテマデガッコウニ…」
璃百「ソレナ」

叉優は寂しそうにこちらを見つめるミカの頭を撫で、言われた通りにすることをお願いする。それを聞き入れたミカは涙目で強く頷いて、手に持つ札をぎゅっと握った。

金光「じゃ、行こっか」
ミカ「行ってらっしゃい!!」

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?「面白そうなことになっているね」

気力があれば続く(まだ起承転結の起くらいだがな)