「出来た!これで終了です」
「うわー、豪華だね。子ども達、喜ぶだろうな」
「ふふ、そうだといいですけど」
「絶対喜ぶよ。ん?これは何?」

颯真はツリーの下に置かれたカードに目をやる。

「クリスマスのクイズ?えーっと、『クリスマスツリーのてっぺんに輝く星の名前は?』え!分かんない!」

真顔で答える颯真に、菜乃花は思わず吹き出した。

「正解は、このラッピングされた本に書いてあるんです」
「そうなんだ!見てもいい?」
「ダメ!子ども達へのプレゼントですよ?」
「えー、気になるんだもん」
「じゃあ宮瀬さんも、明日子ども達と一緒に本で調べてください」
「うん、分かった」

またしても真面目に答える颯真に、菜乃花は堪え切れずに笑い出す。

「宮瀬さん、子どもみたい。あはは!」

途端に颯真は眉根を寄せた。

「子どもみたいなのは君の方でしょ?」
「え?どうして?」

菜乃花はキョトンと首を傾げる。

「気づいてないの?君、酔っ払ったらどうなるか」
「は?!宮瀬さん、私が酔っ払ったところを見たことあるんですか?」
「ええ?!覚えてないの?」
「何を?」

颯真はやれやれと脱力する。

「春樹の家で飲み過ぎて、酔っ払った君を部屋まで送っていったんだよ。そしたら『お風呂に入りたい!』って駄々こねて大変だったんだから」
「はい?!宮瀬さん、私の部屋に入ったんですか?」
「うん、そうだよ」
「そうだよって…。な、何か見ました?」

菜乃花は思わず自分の身体を隠すように両手で抱きしめる。

すると颯真は、思い出したと言わんばかりにニヤリと笑った。

「見たよ」
「な、何を?」
「全く…。あれだけ隠してって言ったのに」

ヒエッ!と菜乃花は、ますます両手を胸の前で交差して身をよじる。

「あの、宮瀬さん?その…、見なかったことにして頂けませんか?」
「無理だね」
「そんなことおっしゃらずに。どうかお忘れください」
「じゃあ、君の部屋に行ってもいい?自分で回収するから」
「は?何を?」
「ほら、そうやってとぼける。やっぱり信用出来ないな。もう一度部屋に行かせて」

そう言うと、颯真は菜乃花が床に広げていた荷物をまとめ始めた。

「飾り付けが終わったら帰るつもりだったんでしょ?」
「はい、そうですけど」
「車で送っていくよ。俺も勤務時間は終わってるから」
「あ、はい。ありがとうございます」

腑に落ちないながらも、菜乃花はありがたく送ってもらうことにした。