「それでは、申し送りを始めます」

みなと医療センターの小児科病棟。

ドクターやナースが集まり、遅番スタッフから夜勤スタッフへの申し送りが行われていた。

今夜はクリスマスイブ。

遅番のスタッフは、この後恋人と街へ繰り出すのだろうか。
心なしか明るい表情だった。

よく見ると夜勤スタッフは、家庭持ちのメンバーが多い。

(ナースも今夜のシフトは、若いメンバーに配慮してあげたのかな)

そんなことを考えながら、三浦は看護師長の言葉に耳を傾けていた。

「それから今夜は、深夜にサンタクロースが子ども達の枕元にプレゼントを置きに来ます。静かに案内してあげてください」

皆は、笑いながら頷く。

「あ、それと。図書ボランティアの鈴原さんが、子ども達の就寝後の21時に来てくれます。プレイルームに飾り付けしてくれるそうです」
「は?!」

思わず三浦は声を上げる。

「21時に?クリスマスイブなのに?」
「え?はい。そんなに時間はかからないから、少し飾り付けしたいと。いけませんでしたか?」
「いえ、大丈夫です」

そう言って視線を落しながらも、三浦はフツフツと怒りが込み上げてくるのを感じていた。