障害者と呼ばれた君と

そして私はやってしまった。これほどまでに自分の行動を恨んだことは無い。学校の備品を壊した時でさえ、ここまで自分を嫌いになったことは無い。かずさの定位置の窓の傍、クラスの子達がみんな好き勝手に話している時、私は告白してしまった。
「みーおー?なんかいつにも増して変な顔してるよー?」
「あの、かずさ。ごめん、私同性愛者なんだ。好きです、かずさのことが」
カタコトの話し方。緊張するといつもこうだ。
これを言った時、心のどこかで期待していた。かずさがお試していいから付き合ってくれないか、同性愛者のことを認めてくれないか。そんな淡い希望はすぐに打ち消されてしまった。
「はーぁ??、むりむりむりむり、バカじゃないの?嫌に決まってるじゃん」
衝撃だった。かずさは私に対してそんな話し方をすることは無かった。かずさはクラスみんなに聞こえる声でこのことを話した。腫れ物を見るような目でみんなが私のことを睨んでいた。
その後の学期は最悪だった。ノートの表紙には「障害者」と書かれていたり、私の分だけプリントが回されなかったり、私の悪口を聞こえるように言ったりした。でもそんなことはさほど悲しくはなかった。1番傷ついたのは、かずさがこのいじめの主犯だったことだ。
クラスメイトの女子二人が
「てか、蓮沼さんとかずさ引きはがらせること出来て良かったよねぇ」
「それ思った!かずさずっとめんどくさいって言ってたし、クラスで人気のかずさに優しくされて蓮沼さんちょっと調子乗ってたもんね」
1度聞いてしまった時の絶望は5分ほど立ち上がれなかったほどだ。いや、体内時計が狂ってたからもっと長いか短かったのかもしれないが。あぁ、あんなに優しかったはずのかずさは、こんなにも性格が悪かったのか。
その後の三学期の3週間はよく覚えていない。
正確には、もう要らない記憶は作らないことにしたのだ。友達だった子に裏切られるなら、友達じゃ無くなればいい、その記憶を作らなければ、消してしまえば、こんなにも胸の傷は深くはならなかった。