彼をその気にさせる方法~ヤツと私の甘恋戦争。そう簡単には勝敗つきません~

「はははっ!」

「課長、説明して下さいよ。蒼真は絶対に言わないって言うし」

休み明けに課長に説明を頼むけど教えてくれそうにもない。
蒼真にこの話をしようとすると不機嫌になって話を逸らされる。

「もう、諦め…」

「遊佐?どうした?」

パソコンに届いたメールに息を飲んだ。

「いえいえ。ちょっと璃子に頼んでた物届いたみたいなんで行ってきます」

席を立ちフロアを出てすぐエレベーターで上層部の執務室が集まる階層へのボタンを押した。


(今日が日程的にも良かったわけか…)

上層部に璃子が居るはずもない。
ましてや上層部は全体会議の真っ只中。
エレベーターを降りて指定された会議室のドアをノックした。

「入って」

ドアをゆっくり開けると会議室の大きな窓を背に腕を組み私に笑みを浮かべる。

「やっぱり貴方だったんですね。峯岸さん」

常務のアカウントを無断に使用しメールと一緒に送られて来た私が蒼真に絡んでいるように加工された写真。

「私は蒼真に近付く毒虫を排除してるだけよ」

組んでいた腕を解き私を指さして「あんたみたいなね」と薄気味悪い顔を浮かべる。

「毒虫と言うより…小バエね」

オリエンタルな美女の笑みは不敵さをプラスして私に歩み寄ってきた。

「毒にハエって」

高い身長から私を見下ろし耳元で「あんたが邪魔なの」と背筋が凍るような低いトーンで囁く。

「邪魔なのは貴方ですよ。私は資料室で振られてる貴方を見ました」

小さい身長を出来るだけ大きく見せる為に胸を張った。

「私は…蒼真に守って貰いました。今度は私が守る番です。もう諦めて下さい!お願いします」

穏便に済ませられるとは思わない。
でもどうにかしてこれで終わらせたい。

「何でお願いされるのよ!!」

バンッと鳴った音に私の脳が揺れる。
彼女の手のひらが右頬に当たりそして左頬にも鈍い音と共に痛みが走る。

(血の味がする)

口の中を切ったのは分かった。

「それでも!」
「うるさいうるさいうるさい!!」

元々ヒステリックな女性なのは分かってた。
これで私が頭を下げれば終わるそう思ってたのに。

(…嘘まじで)

彼女の右手にキラッと光る物に血の気が引いた。

「そんな事して蒼真は喜ぶんですか。誰も誰一人として幸せになれない」

彼女の顔から笑みはとっくに消えて我を忘れてるように見えた。

「アンタに何が分かるのよ!!!!」

迫って来たと同時に腹部にドスッと音がして腹部を触ると手の平が真っ赤に染まる。

ーーバタン!

ドアが開いて勢いよく近寄ってくる蒼真の姿に心做しか安心して目を閉じた。