彼をその気にさせる方法~ヤツと私の甘恋戦争。そう簡単には勝敗つきません~

「行くわよ」とフロアを出た所を璃子に引っ張られるように会社近くのカフェに連れて来られた。

「聞いたわよ!!千波と課長の噂。まさか進展したの?」

璃子さん剣幕やばいです。
運ばれてきたカップの紅茶揺れまくってます。

「えっと…悲しいくらい何もないよ」

“課長と私が手を繋いで歩いてた”と別の噂が流れ出した。

人間とは身勝手な生き物で蒼真との噂なんて簡単に吹き飛んだらしい。

「心配してくれただけ。でも嬉しかった」

さっきは涙を浮かべたのに気持ちはホカホカ暖かい。

「課長との噂が広がれば…まあ千波に危険は及ばないか」

ホッとした璃子の顔に暖かくなった気持ちがサーッと引いて行く。

私と課長の話がこれ以上広がればただ優しさで動いた課長に迷惑が掛かる。
嬉しい気持ちより申し訳なさが上回ってきた。

「本当に優しい人よね。課長なりに千波を守ってくれたんじゃない?自分が居なくなった後を心配してさ」

璃子は綺麗な指をカップの取手に絡ませ口元に持って行く。

「何か悪い事した気分…」

私はシロップ2個入りのキャラメルラテのストローを噛み噛みと2度ほどして唇を離した。

「どっちに?」

「どっち?て何が」

どれとどれを比べたのが分からない。

「主任とすれ違ったんでしょ?」

「蒼真?何で蒼真に悪いの?」

璃子はため息を吐き「まあ…千波には分かんないわねー」と少し憐れむ顔をした。

「ねぇねぇ彼氏さんメール相手分かりそう?」

憐れむ顔を無視して一斉メールを流そうとした犯人の捜索の状況を聞いた。

「その事なんだけど…複雑に回線使われたっぽい。何とか探ってみたら…」

璃子は言いにくそうな顔を浮かべて周りに誰も居ない事を確認すると小声で…

「大元のアカウントが常務のらしいのよね」

と驚く情報を私に告げた。



“絶対秘密よ”と璃子に釘をさされて江波家のソファの上で体育座りをする。

「アカウントが常務…」

常務は雲の上の人で一(いち)社員の私を知るはずもない。
じゃあ…誰?と考えた時に一人だけ頭に浮かんだ。

「峯岸さん…」

常務秘書ならアカウントなんてすぐに手に入る。
代議士の娘ならお金を積めば何でもやってくれる黒い人達も居るだろう。

(何か…二次元の話みたい)

蒼真との別れ話を彼女は納得してなかった。
その別れの後に資料室で私を庇い怪我をした蒼真。

「このままじゃダメだ」

決心をしてソファから立ち上がった。