彼をその気にさせる方法~ヤツと私の甘恋戦争。そう簡単には勝敗つきません~

分かんない。
どこに“その気にさせるスイッチ”があったのか…?

「蒼真、これは?」

ブラウスのボタンを2個ほど外して無い胸を寄せモデルさんのようにポーズを取る。

「何の真似?」

「じゃあこれは?」

上目遣いで見つめてみる。

「呪いでもかけんの?」

スイッチどこ?!
やり取りを思い出しても分からない!!

「教えてよー!!その気スイッチ入ったよね?!」

「何の話かと思えば…」

ため息を吐く蒼真とさっきまでの行動を振り変える私。

うーん…足が痺れて、ポスンと…

「お前また座るの?飽きないね」

また膝の上に座り込んでも平然としてる蒼真からスイッチは見つけ出せない。

「ホントにウサギみたいだわ」

ははっと声を出して笑う始末。
これもスイッチとは違うらしい。
こうなったら…

「ぎゅーっ!」

優しめに腕を蒼真に巻き付けてみる。
怪我に支障がない程度を心がけてはみたけど…

「千波、諦めろ」

「スイッチ教えて!!…っん」

チュッとリップ音を立ててまたキスを落とす。

「キスでお前の言うスイッチ入るなら外国人はいつも発情してる事になる」

そうだよ…その通り。

「下手なキスで欲情は無いな。課長の為にこれも練習する?」

「またバカにしてる。キスくらい誰とでも出来…っつ!」

頬に手をやり大きい手のひらが私を包み大人のキスをしてくる。

(…これやっぱり上手いの?)

耳を塞ぐから頭の中はリップ音と感触でいっぱいになり酸素を全部持って行かれたようにボーッとしてしまう。

「俺に任せて千波は何もするなよ」

そう言ってブラウスのボタンを閉められた。


「…とは言われても」

とんでもないデマと恨み妬みを流した人を知りたい。

まあね、分かるよ?
モテまくりの蒼真が私を庇ったり構ったりしてるのが面白くはないんだと思う。

「伊月主任もう大丈夫なんですか?」

何かにつけて理由を作り代わる代わる女の子達がお見舞いを置いてる。

「少し痛むけどこれ以上は休めないしね」

ニコリと微笑む姿は仏でお見舞いの品々がお供え物に見えてきて私は苦笑いを浮かべた。

(あの女の子達の中の一人が張本人?)

疑心暗鬼にもなります。
皆んな私をチラ見しては苦々しい顔するから全員が怪しく見える。

「お茶でも飲んでっと…」

人を疑うのは疲れる。
普段はそんな事考えもせずに生きてきたから尚の事。

(糖分補給は私の活力!)

女の子達の黄色い歓声にこっちが苦々しい顔を浮かべて席を立った。