彼をその気にさせる方法~ヤツと私の甘恋戦争。そう簡単には勝敗つきません~

大人しく前に座るとカチャと機械音がしてブォーと温風が髪全体覆って身体の力が抜けていく。

「千波、背筋伸ばして」

前屈みになった私の両肩に手をやり蒼真にもたれさせる。

「気持ち良すぎて…」

ゆらゆら揺れる私をダメ人間にする優しい手の動き。

「お前の髪…細くて柔らかいな」

「でしょ?おかげで天パが倍の倍にならなくて済む」

ケラッと笑って答えされるがままに身を委ねた。

「これ…案外楽しいな」

私の髪を乾かし終わったのに蒼真の手はまだ髪を触ってる。

「何が楽しいの?」

(私は楽させて貰えてラッキーみたいな)

いたくイケメンには私の髪がお気に召したみたいで後ろから離れようとしない。

(距離近くない?)

耳元に息がかかってる気がする。

「昔、買ってたウサギ思い出す」

懐かしむ声なんて要らん!
ドキドキ返せ!

「イングリッシュアンゴラで千波みたいな毛質で色も似てたな」

ふと“3回まわって”を思い出した。

犬の次はウサギですか…
まあ今日みたいに優しいならウサギでも良いかも…

いやちょっと待って?
ウサギってペットじゃない?
その気になってくれない要素無くないですか?

「ウサギは良くない…」

「何か言った?」

本来の目的が事故でうやむやになりかけてる。

さすがに「今やろう!」と言ったら瞬殺される未来が見える。

「また良くない事考えてない?」
「そんなわけ…ございませんよ」
「日本語変」

また髪をクシャとされて「俺のお古」と言いながら巷(ちまた)で最近全く見ない電子手帳を渡された。

「これで日本語勉強しろ」
「はぁ?!」
「うるさい。水持って来て」

ソファが玉座に見える…
俺様が王様か…

私は諦めてキッチンにお水を取りに行った。


✼✼✼


じとーっとした視線が痛い。
殺意と興味と凶暴犯を見るような視線。

「背後気をつけなよ〜」

「璃子すごーく楽しそうだね」

ははっと力なく笑い小さい背をもっと縮める。

私のせいで皆んなの蒼真が怪我をして休んでるのが周りは気に入らない。
私だって好きで怪我させたわけじゃないのに周りの視線は酷いものだ。