勉強にも身が入らなくなってしまった。


 これでは成績が落ちて、お母さんをさらに失望させてしまう。


 だから、向きあうことにした。



「愛弓、お母さんは用事ができたから、ちょっと出かけてくるからね」


「はい」


「勉強、がんばってね……もうお母さんの期待を裏切るようなマネはしないでちょうだい」


「はい」




 私が塾をすっぽかして真弓の病室に駆けつけたのが、よっぽど気にくわなかったんだろう。


 事あるごとに、「もう裏切るな」と私に呪いでもかけるみたいに言うようになった。


 お母さん。


 かわいそうな、お母さん。


 私はまた、あなたを裏切ります。


 私は心のなかで懺悔しながら、お母さんを見送った。


 お母さんの姿が消えるのを確認してから、私もスプリングコートを着て簡単に準備をした。


 行き先は、もう決まっている。


 真弓の病室だ。