奥野くんの自転車に乗せてもらって、真弓が搬送されたという総合病院まで送られてきた。


 自転車に乗せてもらっている間、顔に風があたって、耳や鼻先が凍ったように感覚がなくなった。


 怖いとは思わなかった。


 ……今思えば、よく警察につかまらなかったなぁ。


 頭の片隅でそんなことを思いながら、真弓がいるという病室まで駆ける。


 看護師さんや患者さんにぶつからないように気をつけながらだったから、思うように走れなかったけど。


 スライド式のドアの、取っ手をつかむ時間さえ今は惜しい。


 ガラッと音を立てるのと同時に、真弓の病室に転がりこんだ。



「愛弓様……」



 奥野さんが目を見開いて声をかけてきた。


 私はそれにかまわず、ベッドで眠る真弓にすがりついた。



「真弓!」



 真っ白な顔は、なにも返してくれない。



「真弓……」



 それ以上はなにも言えなくて、奥野さんにそっと肩に手を置かれるまで、私は真弓の肩に額をすりつけて泣いた。