天音が全く俺の会社を視野に入れていないから、勧めることができない。

今の状態で勧めると、俺がただ同じ会社で彼女と働きたい男になってしまう。

……まあ、半分くらいはその理由もあるんだが……。

「千尋?どうかしたの?手が止まってるよ?」

「あ、ああ、なんでもない」

「そう?」

俺の気も知らないで、呑気に「次はここに行ってみようかな〜」と

会社のチラシを見比べている天音。

当たり前だが、その中に俺の会社は入っていない。