今、僕は墓の前にいる。

「遅れたけど、この作品を贈る」

"ドサッ"

僕は分厚い原稿用紙の束を墓前に置いた。

すると声が聞こえてきた。

「パパ!!」
「薫!!」
聞き馴れた懐かしい響きに僕は夢かと思った。

そして、後ろを振り向いた僕はさらに驚いた。

楓と椿、そして、百合が立っていた。


当時のままの三人は並んで笑顔で立っていた。

僕は何が起きているのかよくわからなく、これが現実であって欲しいと思いたかった。

ただ僕は、"ボーっ"と、立ち尽くしたまま三人を見ていた。


「おつかれさま」

何事もなかったかのように百合は言った。


「・・・・・・・あぁ」

僕はあの頃と可笑しいくらいに同じなやりとりに、どこか抑えようのない涙が込み上げてきた。
僕の目からまた涙が流れることがあったのだ。

「パパー、遅いよぉ!」

椿と楓は声を合わせるように言った。二人は何も知らないように笑顔だった。

「・・・・・・・・・・・・・・・」
僕は涙で二人の方を見れなかった。


「いきましょう・・・・・。」
百合は微笑みを浮かべながら言った。


三人の身体は透明になって透けてきていた。


「こっ・・・・これは!?椿!楓!百合!」

僕はやはり幻影をみているのだろうか?