手の甲に甲を重ねるような繋ぎ方だ。カイは私に耳打ちする。

「私に倣って復唱なさい。『天より地まで、我らの体の奥までも、巡る流れよ、水の竜よーー我に水の恵を与えよ』」
「て、天より地まで……ひゃあ」

 私はカイの言う通りに詠唱する。詠唱に合わせて、体の奥からむずむずと変な感じがする。

「なんか変だよカイぃ」
「止めないで。体の魔術回路が巡っている感覚を覚えなさい。その『変』を、簡易詠唱で出せるようにするのが最終目標。今は全部詠唱して」
「は、はい……」

 私は最後まで詠唱した。ゾクゾクとする寒気のような興奮のようなものが体を駆け巡って、最後の『与えよ』の部分を口にした瞬間。手のひらから迸るように水が溢れてきた。

「う、うわー!! 止まらないよー!」
「落ち着いて深呼吸! 回路を切りなさい!」

 パニックになる私を落ち着かせてくれる。
 気がつけばカイはびしょ濡れになっていた。
 水も滴る銀髪が、昼下がりの日差しに輝いて綺麗ーーだけど、それどころじゃない。

「ご、ごめんなさい」
「よろしくってよ。……でも、感覚わかったのではなくて?」
「うん。本当にありがとう!」
「じゃあちょっと、しばらく自主練してなさいな。私は着替えてくるわ」
「うん!」

 カイは演習室を後にする。