取り巻きがずいっと出てきた。

「お前が前カフェテリアで言っていた通り、この学園は身分はなしなんだ。つまり公爵令嬢だろうが、生意気言ってると承知しねえぞってことだぞ!」
「……まあ、怖い」

 全く怖くない顔で、カイがつぶやく。

「授業の実演で自分が一番目立てなかったから、先生もいない物陰で、女二人になったところでこそこそと、魔術騎士科志望の筋骨隆々な男子が寄ってあつまって、授業では僕たちの未来のために手を抜いてください、と言われることに屈した方が良いという認識で間違いないかしら?」
「てめえ、女だからって優しくしてたらつけ上がりやがって……!」

 首根っこを掴もうとした彼の手を、カイは軽やかに跳ね除ける。ただ触れただけにしか見えないのに、アンジャベルさんは思いっきり転がった。

「は……はあ!?」

 呆然とするアンジャベルさんと、その取り巻きたち。
 そしてカイは、そっと上を見上げた。
 私はあっと声をあげる。

「店長!」

 赤毛にちょこんと結んだ長い髪、切れ長の金瞳に、すらっとしたおしゃれなカフェの制服を纏っていて、笑顔の裏にどこかミステリアスな雰囲気を纏ったお兄さんーー店長がいた。

「あはは、バレちゃった」

 店長が二階のテラスで魔術煙草を燻らせていた。

 彼は苦笑いして手を振って見せる。
 カイはよく通る声で彼に言った。