木片はシュッと長くなり、そして金属の力で削られる。
 成長と削られるのを繰り返した木片は、カイの手のひらにヒラヒラと落ちてきた時には小さな木彫りの花になっていた。木屑は水で集められ、一箇所にまとまってゴミは散らさない。

「おおおお……!」

 さらなる大きな拍手が上がる。
 アンジャベルさんはカイに通りすがりぎわ、露骨に舌打ちをして言った。

「こざかしいことして調子に乗ってんじゃねえよ」

 その声の迫力に、私は思わずビクッとしてしまう。
 けれどカイは涼しい顔で聞こえなかったとばかりに一瞥もせず、さっと私の隣の席に戻ってきた。

◇◇◇

 その後、授業が終わって移動をしていると、前に男子生徒たちが立ち塞がった。
 私は自然とカイを背中に庇う。

「ど、どうしたの」
「なあ、調子に乗っていきがるのやめてくれって言いにきたんだよ」
「えっ」

 そして私を押し除け、ずいっとカイに近づく。

「おい。お前はお遊びで授業で点稼ぎしてるんだろうが、こっちは就職と出世に関わってんだよ。お嬢ちゃんは弁えてくれねえと国の損失なんだよ」
「……お遊び、ね。確かにお遊びですわね。お花を作るなんて」

 ため息を一つついて、カイはギラっとアンジャベルさんを見上げた。

「……で? お遊びのご令嬢程度に手加減してほしいってわけですの?」

 アンジャベルさんの顔がカッと赤くなる。