「せめて責任は取らないと……。カイ・コーデリックとして、彼女の憧れを壊さないようにしないと」

 カイは決意した。
 純粋な彼女の夢を壊さないように。親友として彼女を守り、育て、立派な魔術師になれるように見守っていこうと。
 身分をばらさず、性別をばらさず、ただの公爵令嬢として、フェリシアの親友として傍にいることを。
 うっかり彼女に対して魔道具の効力が切れてもバレないくらい、徹底して『公爵令嬢』を貫こうと。
 これはカイ・ルイズ・レシュノルティアではなく、カイ・コーデリックとしての責任だ。

「フェリシア……」

 カイはフェリシアの笑顔を思い出す。
 それだけで、潜伏生活でささくれだった心が癒される思いがした。

「ありがとうフェリシア。……フェリシアのおかげで、僕は……もう少し頑張れそうだ」

 ーーフェリシアはまだ知らない。
 ーー自分の笑顔が、一人の孤独な亡命王子の心を癒していることを。