夕暮れの自習室。
カイは魔法歴史学序論の表紙をぱたりと閉じる。
「今日の勉強はここまでにしましょうか、フェリシア」
「うん! また明日ね!」
カイはフェリシアに手を振る。
そして部屋に戻り、ふう、とため息をつく。
部屋に設られた特別のシャワールームで、汗を流し、裸にタオル一枚で鏡の前にやってくる。
そこには、銀髪からお湯を滴らせた、一人の青年の姿があった。
鍛え上げられた均整の整った白い肌に、男子として一般的な長さの髪。鋭い眼差しは、サファイアのように深く輝いた色をしている。
青年ーーカイは手に持ったチョーカーをテーブルに置き、髪を拭いてため息をつく。
時々こうして首につけた魔道具のチョーカーを緩め、幻覚魔法を解く必要は本来はない。
けれど一日一度は解いてしまわなければ、本当の姿も性別も、忘れてしまいそうで恐ろしかった。
カイはそのままベッドに横になる。
公爵令嬢カイ・コーデリックとは全く違う、体を投げ出すような、疲れをあらわにした転がり方で。
「……すまないフェリシア……君が憧れるのは……女装の男なんだ……」
申し訳なさがジクジクと胸を刺す。
カイ・コーデリック。
コーデリック公爵家に養女として匿われている、隣国レシュノルティア王国の第二王子だ。
本来の名前をカイ・ルイズ・レシュノルティアという。
カイは魔法歴史学序論の表紙をぱたりと閉じる。
「今日の勉強はここまでにしましょうか、フェリシア」
「うん! また明日ね!」
カイはフェリシアに手を振る。
そして部屋に戻り、ふう、とため息をつく。
部屋に設られた特別のシャワールームで、汗を流し、裸にタオル一枚で鏡の前にやってくる。
そこには、銀髪からお湯を滴らせた、一人の青年の姿があった。
鍛え上げられた均整の整った白い肌に、男子として一般的な長さの髪。鋭い眼差しは、サファイアのように深く輝いた色をしている。
青年ーーカイは手に持ったチョーカーをテーブルに置き、髪を拭いてため息をつく。
時々こうして首につけた魔道具のチョーカーを緩め、幻覚魔法を解く必要は本来はない。
けれど一日一度は解いてしまわなければ、本当の姿も性別も、忘れてしまいそうで恐ろしかった。
カイはそのままベッドに横になる。
公爵令嬢カイ・コーデリックとは全く違う、体を投げ出すような、疲れをあらわにした転がり方で。
「……すまないフェリシア……君が憧れるのは……女装の男なんだ……」
申し訳なさがジクジクと胸を刺す。
カイ・コーデリック。
コーデリック公爵家に養女として匿われている、隣国レシュノルティア王国の第二王子だ。
本来の名前をカイ・ルイズ・レシュノルティアという。