ふと視線を感じてあたりを見回すと、男子学生たちがちらちらとこちらを見ているのに気づいた。
 嫌がらせされたらどうしようとヒヤッとしたけれどーー彼らは何事もなく目を逸らしてさっていく。

「あ」

 私はふと気づく。
 ーーそういえば、カイって婚約者とかいないのかな?
 公爵令嬢だし、いるに決まってる。
 コーデリック公爵家は外務省の官僚の名門。彼女の父はその外務省のトップのトップ、外務長官を務めている。
 だから一人だけ人払いした寮の部屋に住むこともできるのだろう。
 改めて、すごい人と親友なんだなと思う。

「ん? いかがなさったの?」

 黙り込んだ私に、カイが小首を傾げて尋ねてくる。
 そして目ざとく通り過ぎた男子学生に気付き、凄まじい昏い殺気を漂わせた目で腰を浮かす。

「あの視線をよこしてきた男子学生が気になりまして? 嫌がらせでもされたの?」
「あああ、違うよカイ、なんでもないの」

 カイを、私は慌てて押し留める。過保護なんだから〜。
 そして改めて、大好きな大親友を眺めた。

 サラサラの銀髪に、吊り目の美しい青い瞳。本当に美人だ。
 令嬢にしては高い身長も、堀の深い凛々しい顔も、すっごくかっこいい。 
 こんな美人を奥さんにする人が、いるんだよなあ……。
 釣り合うような男性が、どこかにはいるんだよなあ……想像つかないけど、きっとすごい美形のはずだ。