貴族社会のマナーがなってなくて、浮いているから。成績が悪いから。ブスだから。
 心が冷たく、固くなっていく。
 それでも私は笑顔を作った。ここで諦めるわけにはいかない。私は学びたいのだから。

 ーーその時。
 つかつかと、景気の良いヒールの音が聞こえてきた。
 怒りのこもった足取りに、私は反射的に顔を上げる。

 やってきたのは銀髪を靡かせた、背の高い令嬢で。
 真っ黒なチョーカーが印象的な、冷たい青い瞳が美しい人だった。

 彼女は口を真一文字に引き結び、紅茶をかけたご令嬢の手を捻り上げた。

「きゃっ……!」
「い、いきなりなんなのよ、あなた!」

 彼女は令嬢たちに答えず、視線を扉の方に向けた。
 視線の先を見てーー令嬢たちは小さく悲鳴をあげた。

 そこにいるのは風紀監視官。
 貴族子女たちの素行をチェックし保護者や王宮に報告する、貴族息女たちが最も恐れる存在だった。

 銀髪の令嬢は毅然とした態度で、風紀監視官に告げる。