「えへへ。これで迷いなく、自立した女魔術師の道を目指せるようになったから、むしろいいことかも」
「もう……お人よしすぎですわ、あなたは」

 カイは眉を下げて、少し呆れたように微笑んだ。
 カイは正義感が強いけれど、私が無理に大事にしたくないといえば、それ以上無理をするつもりはないらしい。

 ーーしかし。
 私としては一旦愚痴ってスッキリ終わった話だったけれど、
 カイがこの件をこのまま終わらせるわけが無かった。
 だって彼女は、私のことが大好きな大親友なのだから。

◇◇◇

 翌日のお昼。
 青ざめたシモン様がカフェテリアに従者を引き連れてやってきた。
「え、ええ……シモン様ッ!?」

 婚約して以来ほとんど会っていなかったから、私は驚いた。
 メガネにローアンバーのセンター分けのヘアスタイルがピシっと決まったその姿を、学園内で見るのは初めてだ。だって学年も違うし、三年生は研修で色々と学外にいることが多いから。
 驚いたあまりに、日替わりランチじゃない別のものを頼んでしまった。

「あっ手持ちが……」
「僕が払う! 今日はその牛ほほ肉の煮込み(ラグー)ソースのパスタにしたまえっ」
「ええ、でも一番高いメニュー……」

「払わせておやりなさい」

 そう言ってきたのは隣のカイだ。
 腕組みし、冷ややかな顔でシモン様を見据えている。