「で、今朝帰ってきて、そして今に至るってワケ」
「……なんてことですの、本当に……」

 カイが青ざめてぎゅっと拳を握ってる。その顔の険しさに、周りの学友たちがビクッと怯えている。
 彼女は美人で迫力がある。
 私はけらけらと笑って答えた。

「ねー。ひどいよね。でも婚約破棄自体は父の一存ではなくシモン様とご実家の決定だろうから、私にはどうしようもないんだよね」
「そんなことなくってよ」

 カイは険しい顔をしている。

「シモン先輩のご実家、ジェンティアナ男爵家はそんなことはなさらないはずよ……彼本人も評判の良い紳士だわ。だから私もフェリシアの婚約者としてまあ、安心だと思っていましたの。……怪しくってよ」
「怪しいって?」
「顔を合わせないように言われていたのよね? 顔を合わせたら、不都合があるに違いないわ。調べてみる必要がありそうですわ」
「いいよいいよ、無理しなくても」
「でも」
「まあまあ。本当にシモン様が私のこと嫌になったって結果が出たら、ショックだからさ」

 彼女がハッとする。私は笑顔でパスタにはしゃいでみせた。

「それよりもさ、パスタ伸びちゃうから食べよ?」
「……そ、そうね。望んでいないことをするのは余計なおせっかいですわね。私としたことが逸ってしまいましてよ」
「ごめんね。心配かけるようなこと話しちゃって」