は体が弱かったので私が10歳の時に亡くなった。とても優しい母だった。

 そこで案の定、父は義母と連れ子の義妹を連れてきた。
 義母と義妹は金髪で第一印象から「薔薇の花みたい!」と思うくらい美人母娘。
 マリアンヌとルジーナ。名前もすっごく華やか。
 彼女たちを迎えて早々、父は笑顔で言った。

「よかったな! ようやく家が華やかになった! あの本ばっかり読むブスしかいなかったからな」

 酷い言い方だ。
 元々父は私の容姿を見下していた。
 
 「ブスだなあ」
 「顔が悪い上に勉強が好きだとか、ますますブスだなあ」
 「もう少し痩せろ」
 「いやもう少し太れ」

 適当な罵倒にも程がある。
 そんなわけで、母の死をきっかけに思春期に突入した私としても、父があまり好きではないタイプだと感じるようになっていた。

 ーーそもそも。私のスペックは大体父親似だからなんだけどなあ。

 もちろん父が苦手とはいえ、庇護下にある娘としての弁えはわかっていた。
 だから表向きは従順な娘のふりをしていた。
 けれど、ベタベタに父に懐く美人の義妹と比べたらまあーーそりゃ可愛げなく見えるもので。
 私を守ってくれる母はいないし、義母と義妹は私を何かとからかうし、居心地は悪かった。

 けれど私には夢があった。
 魔術学園に入るという夢が。
 亡き母は元々魔術の先生をしていて、とても優秀で強かったらしい。