あの日から私はジキタリス寮で過ごすことになった。
 私をいじめていた令嬢たちは、私がジキタリス寮に住むことになったと知ると、ピッタリと嫌がらせをやめた。

 私がいじめられなくなったことで、何かと気にかけてくれていたカフェテリアの店長はホッとしてくれたようだったし、私もしっかり睡眠をとって、元気にご飯を食べて、勉強にしっかり打ち込むことができるようになった。

「やっぱ学生は学業よ、学業。しっかりやんな」

 店長は店の裏で、魔法煙草を燻らせながら私にそう言った。

「はい! カイみたいな綺麗でかっこいい女魔術師目指します!」
「あはは、それ毎日3回くらい言ってるよね」

 よーし!勉強に魔術に、頑張るぞー!

◇◇◇

 そんな風に意気込んでーーカイと仲良くなって、一週間ほどが過ぎた頃。
 学園入学にあたっての、式典やパーティ、学力検査、体力測定と言った行事が終わり、ようやく来週から講義が始まるといったところになった。
 
 一緒にカフェテリアで昼食をとっていると、カイがそういえば、と話しかけてきた。

「あなた週末いなかったわよね。何をしていたの?」
「ああ、うん。婚約破棄されてきたんだ」
「こ、」

 昼食どきのカフェテリアに、カイの裏返った声が響く。
 
「ええ……婚約破棄、ですって!?」
「カイがそこまで大声だすの初めて聞いたなあ」